2022 Fiscal Year Research-status Report
セリン代謝変動を切り口とした肺高血圧症の理解と新規治療標的の探索
Project/Area Number |
21K08198
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
酒井 俊 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (30282362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 秀和 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30528493)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺動脈性肺高血圧症は、肺動脈血管内皮細胞および肺動脈血管平滑筋細胞の増殖による肺動脈壁肥厚・血管閉塞を本態とし、肺血管抵抗・肺動脈圧上昇による右心不全を呈する難治性疾患である。本研究では、代謝産物の変動を切り口として、肺動脈性肺高血圧症の病態をアミノ酸代謝の面から考察し、新規の治療標的に対する探索的研究を行うことである。本年度は、肺高血圧モデルの肺組織において、セリンの蓄積があり、セリン合成酵素PHGDH(ホスホグリセリ ン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子の発現増加が関与することを証明することであった。C57BL6マウスを酸素濃度10%の低酸素下において、3週間飼育した。血行動態測定後、対照群である室内気で同期間飼育したマウスに比べ、低酸素下飼育マウスの右室収縮期圧は有意に増加し、右室-左室重量比も有意に増加し、マウスは 肺高血圧を呈していることが明らかとなった。凍結保存した肺組織をメタボローム解析により代謝産物を測定したところ、総アミノ酸濃度の変化はないが、肺高血圧モデル肺ではセリン濃度が増加し、代謝下流のグリシン濃度の減少が認められ、セリン蓄積に傾いていることが明らかになった。そしてセリン合成酵素のうちPHGDH遺伝子発現が有意に増加していることを、リアルタイムPCRにより定量確認した。以上より、低酸素誘発性肺高血圧モデルの肺では、セリン蓄積が生じ、その際、セリン合成が亢進していることが示唆された。以上の結果は、肺高血圧症の肺では代謝変動があり、アミノ酸代謝が変化し、セリン合成が亢進している ことを意味する。セリン蓄積が肺高血圧症の病態形成にどの様に関与するのか解明していくことが望まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
病気療養により研究を中断していたため、予定通りの研究を進めることが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、複数の肺高血圧モデルでも同時解析を進めることを予定していたが、想定以上の時間がかかることが判明した。そのため、現在の低酸素誘発性肺高血圧マウスモデルを中心に解析を進める。肺検体においてセリン濃度を高値で あることを示し、肺高血圧症では代謝変動があることを確認する。そののち、セリン合成酵素PHGDH遺伝子の発現が増加している事を確認する。
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Causes of Carryover |
病気療養にて、令和4年度は研究を進められる状況になく、交付された研究費を全て使用することが出来なかった。本年度は、昨年度に行えなかった研究を再開していく予定である。
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