2022 Fiscal Year Research-status Report
特発性肺線維症における鉄代謝によるミトコンドリアDNA放出機構と線維化の解明
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21K08214
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水村 賢司 日本大学, 医学部, 兼任講師 (20761688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
権 寧博 日本大学, 医学部, 教授 (80339316)
丸岡 秀一郎 日本大学, 医学部, 准教授 (80599358)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 特発性肺線維症 / 鉄代謝 / ミトコンドリアDNA / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、進行する肺の線維化を制御するセカンドメッセンジャーとしてミトコンドリアDNA(mtDNA)に着目し、鉄代謝によるmtDNAの細胞外放出メカニズム と線維化について検討し、臨床応用への研究基盤を確立することを目的としている。 初年度は、肺上皮細胞を用いて、タバコ煙がmtDNAをミトコンドリアから細胞質を経て細胞外に放出させ、その過程を鉄代謝が制御していることを示した。 令和4年度は、鉄代謝の肺線維化における役割を、マウスモデルを用い検討した。肺の線維化過程における鉄代謝の関与を検討するために、ブレオマイシン(BLM)肺線維症マウスモデルにDFOを経気管支的に投与して、肺の線維化を評価した。BLM投与したマウス肺のHE所見では、肺胞構造の破壊を伴う胞隔炎と間質の肥厚を認めたが、BLM投与マウスにDFOを経気管支投与すると、胞隔炎と間質の肥厚ともに抑制されていた。肺線維化の病理評価である Ashcroft スコアでも、BLM単独投与群に比べてBLM+DFO投与群では有意に低下していた。さらに、肺組織中のヒドロキシプロリン量を測定することにより、生化学的に肺の線維化を評価した。肺組織中のヒドロキシプロリン量はBLM投与によって増加したが、BLM単独投与群に比べてBLM+DFO投与群ではヒドロキシプロリン量が有意に低下していた。以上の結果は、生体内でも鉄代謝が肺の線維化を制御していることを示唆するものである。 令和5年度はmtDNAを中心に検討を行う。具体的には、BLM肺線維症マウスモデルの血中および気管支洗浄液中のmtDNA量を測定して、線維化との相関を解析し、mtDNAが肺線維症のバイオマーカーになりうるか検討する。またmtDNA自体が線維化作用を有しているか検討するために、BLM肺線維症マウスモデルにmtDNAを経気管支的に投与して肺の線維化を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、研究期間内に、①タバコ煙暴露によるmtDNA放出と鉄代謝の関係、②鉄代謝とmtDNAによる肺線維化の制御機構、③血中mtDNAの線維化バイオマーカーの可能性について検討することを目的としている。 初年度は肺上皮細胞を用いて、タバコ煙がmtDNAをミトコンドリアから細胞質を経て細胞外に放出させ、その過程を鉄代謝が制御していることを示し、タバコ煙暴露によるmtDNA放出と鉄代謝の関係について明らかにした。 令和4年度は、鉄キレート剤であるDFOがマウス肺線維症モデルにおいて肺の線維化を抑制していることを示した。この結果により、鉄代謝による肺線維化の制御が明らかとなり、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をもとに、mtDNAが肺線維症のバイオマーカーになりうるか検討する。具体的には、BLM肺線維症マウスモデルの血中および気管支洗浄液中のmtDNA量を測定して、肺の線維化マーカーであるAshcroft スコアとヒドロキシプロリン量と相関があるか検討する。またmtDNA自体が線維化作用を有しているか検討するために、BLM肺線維症マウスモデルにmtDNAを経気管支的に投与して、マッソントリクローム染色、Ashcroft スコア、ヒドロキシプロリン量を用いて肺の線維化を評価する。
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