2023 Fiscal Year Annual Research Report
COMMD5による急性腎障害から慢性腎臓病への進展予防メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K08239
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松田 裕之 日本大学, 医学部, 助教 (10646037)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | COMMD5 / HCaRG / 急性腎障害 / 慢性腎臓病 / E-カドヘリン / 尿細管上皮の完全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性腎障害(AKI)は治る病気と考えられていたが、多臓器不全を伴うことが多く、その罹患率の高さや長期予後の悪化が知られ、AKIの早期治療介入と慢性腎臓病(CKD)への進展予防について注目されるようになった。上皮細胞は、生体内の内部環境と外部環境を隔て、生体の恒常性を維持する役割を担っている。本研究では、尿細管上皮細胞の脱落による尿細管上皮の完全性の喪失が、AKIの発症に関わっているのではないか。そして、COMMD5/HCaRGが、細胞内膜輸送に関わるレトリーバー複合体と結合し、細胞間構造の安定性を制御し、尿細管上皮の完全性を保つため、細胞が受ける障害が軽減され、AKIの発症とCKDへの進展が抑制されるのではないかと仮説を立てた。野生型マウスを用いて作製した薬剤性AKIでは、E-カドヘリンやβ-カテニンなどの細胞間接着因子の破壊と細胞内酸化ストレスの上昇、損傷ミトコンドリアやリポフスチン顆粒の蓄積が観察されたが、COMMD5高発現マウスでは腎機能障害や組織障害が軽減されていた。また、薬剤及び虚血障害後のCKDモデルにおいて、COMMD5は腎臓の線維化を抑制していた。培養尿細管上皮細胞に種々の酸化ストレスを加え、COMMD5の細胞保護メカニズムを検討したところ、COMMD5は、FoxO転写因子を介してE-cadherinの発現を上昇させ、細胞間構造の安定性を制御している可能性が示唆された。また、COMMD5は、抗酸化防御機構であるグルタチオン経路の遺伝子発現を亢進しており、膜輸送体であるCOMMD5-レトリーバー複合体が、細胞内蛋白輸送の制御を介して尿細管上皮の完全性を保ち、細胞死が軽減され、腎保護に働くと考えられた。これらの成果の一部は、American Journal of Physiology-Renal Physiologyに投稿し、第1回査読を経て、修正投稿中である。
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