2021 Fiscal Year Research-status Report
抗好中球細胞質抗体関連血管炎へのn-3系脂肪酸乳剤の効果についての研究
Project/Area Number |
21K08244
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中村 典雄 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (60332657)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂肪酸乳剤 / ANCA関連血管炎 / n-3系多価不飽和脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ANCA関連血管炎は、高齢者に多く急速進行性腎炎の原因となる代表的疾患であり、ステロイド療法を主体とした免疫抑制療法が広く行われている。しかし、感染症で命を落とすことも稀ではなく、感染のリスクが少ない新たな治療法の開発が望まれていた。 一方、n-3系多価不飽和脂肪は本疾患に効果があるという報告が散見されており、本研究の目的は、ANCA関連血管炎モデルマウスにn-3系多価不飽和脂肪酸乳剤を投与し、その効果を検討することとしている。 昨年度は、本研究に用いる脂肪酸製剤、エイコサペンタエン酸(EPA)乳剤、ドコサヘキサエン酸(DHA)乳剤を作成した。作成方法は研究実施計画書に記載のとおり、まず、鰯の可食部より油脂を抽出し、-70℃にて結晶化し飽和脂肪酸を分離する。残りの多価不飽和脂肪酸に富むトリグリセライド(TG)をメチル化した後、液体高速クロマトグラフィーにてEPAメチルエステル分画を採取する。これを水解して得られたfree EPAとグリセオールを反応させてEPA-TGを得る。このEPA-TGを0.2%のαトコフェロールと卵黄レシチンとともにGeyerらの方法で乳化しEPA乳剤を作成する。この組成は、100mL当たり10gのEPA-TG、1.2gの卵黄レシチン、2.5gのグリセオールを含有する。同様の方法で、DHA乳剤も作成した。 作成した乳剤を脂肪酸分析にて確認したところ、EPA乳剤は90%以上、DHA乳剤は85%以上の純度となっていた。同時に、対照薬剤であるn-6系多価不飽和脂肪酸乳剤(ダイズ油主体)を作成、リノール酸の純度は約70%であった。本年度は、これらを用いてANCA関連血管炎モデルへの投与実験に着手する予定である。 なお、関連研究として、脂質・脂肪酸バランスと疾患、病態との関連についての検討を行い、関連学会にて発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、所属が異動(医学研究科→保健学研究科)となった初年度であったため、研究体制の再構築など時間を費やしたこと、コロナ禍の影響で担当している附属病院診療業務の負担が大幅に増大したこと、また、今年9月に開催される、本研究にも関連する学会(日本脂質栄養学会第31回大会)の大会長を担当しており、その準備に忙殺されたこと、などから、進捗状況は予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に用いる脂肪酸乳剤の作成はほぼ完了したため、今年度より本格的にANCA関連血管炎モデルを用いた本実験に着手するつもりである。現在進捗が遅れている理由に挙げた点(異動初年度であったこと、コロナ禍の影響、学会開催担当による)はいずれも本年度前半には解決される見込みであり、本年度、特に後半からは予定通り進めることができると確信している。
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Causes of Carryover |
昨年度は諸事情により、実験進捗状況がやや遅れていた。具体的には、動物実験に使用する薬剤の開発・作成・調整に終始し、動物実験を予定どおり遂行できず、本年度より本格的に動物実験に着手する予定である。このため次年度使用額が生じ、次年度使用額と当該年度以降分として請求することとなった。
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Remarks |
中村典雄:慢性腎臓病(CKD)と脂質・脂肪酸栄養.エナロイ錠発売記念Web講演会 in 弘前、2021、4、20
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