2022 Fiscal Year Research-status Report
抗好中球細胞質抗体関連血管炎へのn-3系脂肪酸乳剤の効果についての研究
Project/Area Number |
21K08244
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中村 典雄 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (60332657)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂肪酸乳剤 / 急速進行性腎炎 / n-3系多価不飽和脂肪酸 / ANCA関連血管炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
ANCA関連血管炎は、高齢者に多く急速進行性腎炎の原因となる代表的疾患であり、ステロイド療法を主体とした免疫抑制療法が広く行われている。しかし、感染症で命を落とすことも稀ではなく、感染のリスクが少ない新たな治療法の開発が望まれていた。最近、補体C5a受容体阻害薬(アバコパン)が臨床でも使用可能となったが、やはり感染症へのリスクは変わっていない。 一方、n-3系多価不飽和脂肪は本疾患に効果があるという報告が散見されており、感染症リスクを高めることなく血管炎抑制効果を期待できる可能性がある。本研究の目的は、ANCA関連血管炎モデルマウスにn-3系多価不飽和脂肪酸乳剤を投与し、その効果を検討することとしている。 2021年度は、本研究に用いる脂肪酸製剤、エイコサペンタエン酸(EPA)乳剤、ドコサヘキサエン酸(DHA)乳剤を作成した。作成した乳剤を脂肪酸分析にて確認したところ、EPA乳剤は90%以上、DHA乳剤は85%以上の純度となっていた。同時に、対照薬剤であるn-6系多価不飽和脂肪酸乳剤(ダイズ油主体)を作成、リノール酸の純度は約70%であった。 2022年度は、ANCA関連血管炎モデルマウスの準備が整わず、代替策として、急速進行性腎炎を惹起するラット腎炎惹起用モノクローナル抗体b35 (IgG2b) (Chondrex、岩井化学薬品株式会社)を用いて腎炎モデルを作成した。4週齢の雄のWKYラットに50μg、100μg、200μgのb35抗体を腹腔内投与し、7日~8日後に代謝ケージを用いて蓄尿し1日尿の一部を採取、また蓄尿後麻酔科にて屠殺、血液、腎を採取した。蓄尿の一部より1日の尿蛋白排泄量、血液よりCr、シスタチンC、BUN、腎組織にてHE、PASおよび免疫染色を行った。尿蛋白は用量依存的に増加し、腎組織においては半月体形成性腎炎を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021度は、所属が異動(医学研究科→保健学研究科)となった初年度であったため、研究体制の再構築など時間を費やしたこと、コロナ禍の影響で担当している附属病院診療業務の負担が大幅に増大したこと、また、2022年9月に開催された、本研究にも関連する学会(日本脂質栄養学会第31回大会)の大会長を担当したことなどより、進捗状況が遅れていた。 2022年度は、研究体制もほぼ確立し、診療業務も徐々に定常状態となり、大会長として開催した日本脂質栄養学会第31回大会も9月に無事終了したため、10月からは順調に動物実験が進んでいる。なお、医薬基盤・健康・栄養研究所に問い合わせて、ANCA関連血管モデルマウスの手配進めているところであるが、代替モデルとして、ラット急速進行性腎炎モデルを作成しており、n-3系多価不飽和脂肪酸乳剤の効果を確認する段階にきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、引き続き医薬基盤・健康・栄養研究所と連絡を取りながらANCA関連血管炎モデルマウスの導入を図ること、また、ラット腎炎惹起用モノクローナル抗体b35 (IgG2b)を用いた急速進行性腎炎モデルラットを用いて、すでに作成済みのEPA乳剤、DHA乳剤の腎炎予防効果、治療効果に関する実験を進めていく。
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Causes of Carryover |
2021年度は諸事情により、実験進捗状況がやや遅れていた。具体的には、動物実験に使用する薬剤の開発・作成・調整に終始し、動物実験を予定どおり遂行できなかった。2022年度より本格的に動物実験を開始し、順次予定の実験を進めているが、未だ遅れている状況である。このため次年度使用額が生じ、次年度使用額と当該年度以降分として請求することとなった。
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