2021 Fiscal Year Research-status Report
ウロモジュリンの生理的制御メカニズムと病態生理学的機序の解明
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21K08249
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
森 崇寧 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (00735813)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウロモジュリン / UMOD / 高血圧症 / ADTKD / 遺伝子解析研究 / 次世代シークエンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
UMOD(Uromodulin)はADTKD(Autosomal Dominant Tubulointerstitial Kidney Disease)などの希少腎疾患原因遺伝子でありながら、common diseaseにも関与する極めて重要かつ影響力の強い遺伝子である。しかしながらUMODの生理的な分泌制御機構や、変異遺伝子の病態メカニズムについては未だ不明な点が多い。これらを解明することは、ADTKDのみならず広くCKD患者の治療法創出に寄与できる可能性がある。これまで生体内でのUMOD尿細管分泌刺激は不明であったが、我々はUMODの既知の生理機能から尿濃縮との関連性に着目し、AVP(Arginine vasopressin)が重要な生理的分泌刺激因子であることを発見した。目的① DDAVPを軸としてUMODの生理的制御因子を解明すること に関しては、マウスin vivoでの検証実験に加えて、新たに構築した極性付きMDCK細胞(Madin-Darby canine kidney cell)を用いたシグナル検証実験によってより生体内に近い現象を捉えることが可能となり、AVP/Forskolin (FSK)刺激は細胞内cAMP増加、主にその下流分子PKAを介していることを示した。また、多量体形成を伴うUMODの尿細管分泌にはプロテアーゼによるUMOD自身の切断が必要であることは知られていたが、プロテアーゼ阻害薬はcAMPによる分泌活性上昇をキャンセルすることが確認され、DDAVP/cAMP/PKAシグナルによる分泌亢進には、何らかのプロテアーゼ活性化が重要な役割を担っていることを確認した。この知見は本学プレスリリースにて事前周知したのち、Hypertension誌に受理された(Nanamatsu A, Mori T, et al. Hypertension, 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
UMOD発見から70年余が経過し、その生理的意義、遺伝子変異のもたらす腎疾患表現系、またはバイオマーカーとしての有用性等は様々検証されてきた中で、尿細管分泌や発現量制御に関わる生理的制御因子に関する知見は未だ乏しいと言わざるを得ない。これは真にUMODの関わる病態生理へのより深い理解や、創薬標的としての検証を行う上でも必須の情報といえる。そこで当初申請書に記載した通り目的①に関し我々はUMODの生理的な尿細管分泌刺激因子としてAVPを同定し、続いて極性付きMDCK細胞を用いたin vitro系でのシグナル検証実験によって、AVPによってもたらされたcAMP増加は主にPKA活性化、UMOD分泌に関わるプロテアーゼ活性上昇を介して尿細管分泌を増加させるメカニズムを解明し、Hypertension誌へ報告した。これは生理学的にも重要な知見であることが支持される結果であった。また、申請書記載の目的② 変異UMODの病態生理学的機序を解明すること に関しては、引き続き培養細胞系での検証に加え、新たにOxford大学のProf. Rajesh Thakkerとの共同研究にて、ADTKDの表現系を呈するとして既に報告されたUMOD(+/C125R)変異ノックインマウス入手に成功した。既に表現系が確認されたマウスを用いて未解明の病態生理を明らかにすることや、新たな治療方策の有効性を検証する方法は時間的費用的な効率性が高いと考えられる。我々が既に培養細胞系で得た知見である変異UMODがpolymer形成不全をきたし、尿細管上皮細胞膜上に異常凝集する現象がin vivoでも観察されるかの検討も可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivo病態モデル(UMOD+/C125R変異KIマウス)を入手したことから、これまでin vitroで得た知見を、特に変異UMODの病態解明や治療法検討という視点でさらに深めることを想定している。例えば、培養細胞では野生型UMODの培養上清分泌量はFSKによって増加することを確認したが、変異UMODにおいても同様に分泌量が増加することが確認できた。このことは従来の知見である変異UMODのERへの異常集積、また我々の得た細胞膜上の異常凝集という知見に関しても、その量を減少させうる新たな治療因子となる可能性があり期待される。尿細管分泌刺激因子については、FSK等cAMP増加を介するものに加え、Hypertension誌での報告で明らかにしたプロテアーゼの関与からは、カモスタットメシル酸塩やガベキサートメシル酸塩等他のプロテアーゼ阻害薬の有効性についても検討を進める。これら薬剤は既に臨床利用され、マウスin vivo試験へも応用しやすい。さらにAVP/FSK刺激によってUMODの尿細管分泌量に影響を与える相互作用因子を同定するため、質量分析法を用いてUMODに結合する新規分子同定を目指す。これらの検証を通じて、ADTKD治療に直結しうる知見を見出すことが目標である。 これらの基礎的検討に加え、これまでに引き続きADTKDを含む遺伝性腎疾患患者について引き続きNGSパネルによる網羅的遺伝子解析を継続する。UMODに加えもう一つADTKDのメジャーな原因と推定されているMUC1変異については、ホットスポットがリピート領域内にあるという特性から、従来方での検出は困難である。我々はOxford Nanopore社のウルトラロングリードシークエンサーを用いて安価かつ迅速な変異検出法構築を試みている。実現すればMUC1変異をターゲットとした治療方策の検討にも有用であると考えられる。
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Research Products
(18 results)