2022 Fiscal Year Research-status Report
免疫学的腎炎モデルにおけるADAMTS13を介した腎臓での血栓形成機構の解明
Project/Area Number |
21K08272
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 瑶子 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (90649443)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 裕志 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (90784174)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 免疫学的腎炎 / ADAMTS13 / 補体 / VWF |
Outline of Annual Research Achievements |
ADAMTS13は止血因子であるVWFの特異的切断酵素として働く一方で、抗炎症作用も有する血中タンパク質である。本研究は、ADAMTS13欠損(KO)マウスを用いた免疫学的腎炎(NTN)モデルの病態解析を通して、ADAMTS13による腎臓での血栓制御機構を分子レベルで明らかにすること、腎局所に発現する同酵素の役割を解明することを目的としている。 申請者らはこれまでに、野生型(WT)マウスとADAMTS13-KOマウスに当研究室オリジナルのNTS(ラット腎糸球体基底膜に対するヒツジ抗血清)を投与すると、KOマウスではTTP様症状を呈し、WTに比べて生存率が低下することを明らかにした。病態解析の結果、NTS投与後のKOマウスではWTに比べ血中VWF値が有意に上昇し、各種臓器にVWF抗体陽性の血栓形成が認められた。令和4年度は、ADAMTS13-KOのNTNモデルにおける組み換えヒトADAMTS13の治療効果を検討し、同酵素の投与はKOマウスに認められるTTP様症状や生存率を改善することを明らかにした。さらには、in vitroの実験系において、NTS投与後のKOマウスではWTに比べ血小板凝集能が亢進することを示唆するデータも得られた。また、NTS投与後のKOマウスに認められる病態の形成には好中球よりもむしろ補体が何らかの形で関与する可能性を示すデータが得られ、現在、解析を進めている。令和5年度は、NTS投与KOマウスと補体との関連性をより詳細に解析するとともに、得られた結果を国内外の学会や英文誌等で発表する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ADAMTS13-KOマウスのNTNモデルにおけるTTP病態の評価、補体の評価、ADAMTS13の治療効果検討を実施し、新たな知見を得られた。一方、腎局所に発現するADAMTS13の役割に関しては不明な点も多く、KOマウスをベースに後天性足細胞障害モデルマウスを作製・解析するなど、より詳細な解析が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ADAMTS13-KOマウスのNTNモデルにおける補体の関与を明らかにするため、より詳細な補体のプロファイル解析(血中C5b-9測定、免疫蛍光染色による糸球体におけるC3沈着の判定など)を実施する。さらには、あらかじめ補体を枯渇させた状態のKOマウスにNTSを投与した際の病態解析やADAMTS13-KOマウスのNTNモデルにおける抗補体薬の治療効果についても検討する。また、足細胞発現ADAMTS13の動態解析として、LPS投与による後天性足細胞障害モデルの解析を検討する。
|