Outline of Annual Research Achievements |
(目的)糖尿病腎の炎症の病態形成と腎病変の進展におけるシステイニル ロイコトリエン受容体1(CysLTR1)の果たす役割をCysLTR1拮抗薬プランルカストを用いて解明する.(研究成果)実験1:Wistar fatty(WF)ラットに対するプランルカストの糖尿病性腎臓病の進展抑制効果の検証.36週齢雄のWFラットに8週間,プランルカスト3mg/kg或いは対照液を投与(ゾンデにて投与).その結果,プランルカストは,WFラットにおける尿中L-FABP排泄量の増加,腎尿細管間質病変(炎症,線維化,尿細管細胞障害),mTORの活性化及びオートファジーの低下,異常ミトコンドリアの尿細管細胞内における蓄積を軽減さした.実験2:培養ヒト近位尿細管細胞(HK-2細胞)の高ブドウ糖(30mM)(HG)によるオートファジー及び炎症の変異に対するプランルカストの効果の検証.対照群(5mMブドウ糖含有培地に25mMマンニトールを添加)と比べ, HG群にて有意なp-AMPK発現の低下とp-S6RP発現の増加を認めた(24時間培養後).また,プランルカストは,1~50μMの附置にて,1~10 μMでは用量依存的に,10~50μMでは,ほぼ同等に,HG培養下において,p-AMPKの増加とp-S6RP発現の低下,LC3-II発現の増加を認めた.プランルカストの細胞毒性に関して,MTTアッセイ及びLDH releaseアッセイにて評価したところ,50μMでのみ細胞毒性を示した.またHGにより誘導されるCysLTR1,p-S6RP発現の増加,p-AMPK発現の低下は,プランルカスト10μMの附置にて,CysLT1R,p-S6RP発現は低下,p-AMPK発現は増加した.LC3II発現は,プランルカストにより有意な増加を示した.HGにより誘導される炎症性変異は,p-NF-κB,NLRP3,IL-1β,TNF-α発現は.プランルカスト10μMの附置にて有意に低下した.(結語)プランルカストは,糖尿病状態の腎近位尿細管細胞における栄養応答シグナル変異(AMPK活性の低下とmTORC1活性の低下)及びオートファジーの低下を回復することで,炎症を改善し,腎保護効果を発揮する可能性が示唆された.
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