2021 Fiscal Year Research-status Report
好中球異常を伴う自己炎症性疾患の病態解明と治療法開発
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21K08295
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
尾崎 富美子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任助教 (60795277)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | PAPA症候群 / 自己炎症性疾患 / PSTPIP1 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己炎症性疾患の一つであるPAPA(Pyogenic Arthritis, Pyoderma gangrenosum and Acne)症候群は、PSTPIP1遺伝子の機能獲得型変異が、無菌性に進行性の化膿性関節炎及び、難治性の皮膚症状を引き起こす疾患である。本疾患は、好中球の機能亢進が病態に関与していると推測されている。しかし、PSTPIP1変異がどのような分子メカニズムで好中球の機能異常を来すのか、またPSTPIP1変異による好中球異常と病態形成の機序の解明についての本質的な原因は不明な点が多い。 そこで我々は、PAPA症候群及びPAIDs疾患iPS細胞由来病態関連細胞(主に好中球、マクロファージなど)やPAPA症候群マウスモデルを用いた病態解析を通して、より特異的で有効な治療法の開発研究を進めた。まず健常人由来iPSCsを用いて以前報告された方法を一部改変して、iPS細胞からの好中球への分化誘導法を行ったところ、好中球マーカーであるCD34-/CD15+/CD66b+/CD49+/-/CD10+/ CD16+の細胞が約90%の純度で得られた。得られた好中球は、May-Gimsa染色により成熟好中球様の形態を示し、好中球マーカー遺伝子の発現や刺激後のROSの産生など機能的な特性を持っており、当該疾患解析に有用であると考えられる。 さらに、疾患特異的iPS細胞を用いて分化誘導した好中球での解析を進めており、患者由来好中球は健常人iPS細胞由来好中球に比して、定常レベルでのROSの産生が高く、細胞死の亢進やカルプロテクチンの増加も見られた。 現在は、好中球以外の免疫細胞を用いて炎症惹起のメカニズムと炎症が慢性化する原因の解明のために、患者iPS細胞と健常iPS細胞から単球・マクロファージに分化した検討を進め、より有効な治療法の探索を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者由来好中球は健常人iPS細胞由来好中球に比して、定常レベルでのROSの産生が高く、また細胞死の亢進も見られた。これは、PAMI症候群患者の末梢血から分離した好中球でみられた現象と同様であった。 これらの表現型は患者由来の末梢血好中球の表現型と一致しており、我々のiPS細胞疾患モデルは、in vitroで患者の状態を再現することに成功したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、iPS細胞疾患モデルを使って、包括的なRNA-Seq遺伝子発現プロファイリング解析を進めており、当該疾患における誘導炎症と慢性化の原因を探り、より特異的で有効な治療法を見出していく予定である。
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