2021 Fiscal Year Research-status Report
新規治療ターゲットとしての汗中ヒスタミンの産生機序と病的意義の解析
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21K08302
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高萩 俊輔 広島大学, 病院(医), 講師 (40448246)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 汗腺 / ヒスタミン |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床研究として、発汗刺激時に皮膚の疼痛を訴える患者の臨床データを解析した。発汗刺激で生じる皮膚の疼痛は、若年男性に好発し、持続時間は短時間で、多くはコリン性蕁麻疹様の皮疹や無汗を伴って生じるが、疼痛のみを呈する患者もいること明らかにした。疼痛には汗中あるいは血清中のヒスタミンが関与する可能性が考えられた。基礎研究としては、マウスの足底から得た皮膚を酵素処理することで汗腺組織を一塊として単離する方法を確立した。単離した汗腺を培養液中で浮遊培養あるいはマトリゲル中に包埋することによる培養方法を確立した。浮遊培養では培養する時間が長くなるにつれて汗腺細胞に形態変化を来したが、マトリゲル内に包埋して培養することで比較的長い期間細胞の維持を可能とした。汗腺におけるヒスタミン産生を検出するため、単離した汗腺におけるヒスタミン脱炭酸酵素(HDC)遺伝子発現をPCRで解析し、マウス汗腺においてHDC遺伝子が発現していることを確認した。次に、実際に産生されたヒスタミンを測定するために、採取したマウス汗腺および表皮をマトリゲル内に配置して培養し、上清中のヒスタミン濃度と、マトリゲル内の汗腺をホモジナイズした抽出液中のヒスタミン濃度を測定した。結果、培養汗腺の抽出物中には著明なヒスタミン産生が検出され、また汗腺を培養した上清においてもヒスタミン濃度の上昇を認めた。一方、同様に培養した表皮では、表皮の抽出物および培養上清中に優位なヒスタミン濃度の上昇は検出できなかった。これらの結果から、マウス足底汗腺ではHDC遺伝子が発現することで、ヒスタミン産生を生じうる可能性が高いことが明らかとなった。続いて、マウス汗腺におけるヒスタミン代謝、分泌機序を解明するために、ヒスタミン代謝酵素、ヒスタミントランスポーターの遺伝子発現を調べる予定とし、遺伝子発現実験のためのPCR条件を確立しつつある状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
汗腺の培養実験系を確立できたが、汗腺におけるHDC発現やヒスタミン産生の程度は強くなく、それらを検出するための実験系の確立の一つ一つに時間を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス汗腺におけるヒスタミン代謝酵素、ヒスタミントランスポーターの発現を調べるために、PCRおよび蛋白発現解析の条件を確立する。採取した汗腺組織におけるヒスタミン代謝酵素、ヒスタミントランスポーターの遺伝子発現を検索し、検出されたヒスタミントランスポーターに関しては、その局在をマウス足底の組織切片を用いて免疫組織染色することで確認する。また、トランスポーターのsiRNAあるいは阻害剤により汗腺からのヒス タミン分泌抑制効果を検討する予定である。また、汗腺細胞のヒスタミン産生を増強する機序を検討するため、培養系にアセチルコリン/サブスタンスPなどの神経ペプチド/サイトカイン(IL4、IL13など)/ヒスタミン/LPSを添加して誘導されるHDC遺伝子とヒスタミン産生を測定する。さらに、汗中に検出される炎症性メディエータはヒスタミンだけではなく、その他の炎症性メディエータや抗菌ペプチドも含まれている。しかし、それらの汗腺における産生は不明であるため、本研究で確立して培養系を利用してそれらの産生も検討する予定である。
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