2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト皮膚微生物叢における菌株レベルでの新規機能の同定
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21K08308
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊東 可寛 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (70645837)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロバイオーム / 皮膚常在菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚常在菌は外界からの病原菌の侵入を防ぐバリアーとして機能することに加えて、宿主の免疫応答や代謝機能を調整することで恒常性の維持に重要な役割を担っている。しかしながら、個々の菌と宿主との相互関係は多くの検討の余地が残されている。これまでの研究では病原性のある菌種に着目されることが多く、健常な状態で宿主と共生的な皮膚常在菌との相互作用は特に未解明な点が多い。そこで本研究課題ではマウスやヒトから単離した皮膚常在菌を用いて、宿主と単離菌との相互作用を解明することに主眼を置いている。宿主ー菌の有益な相互関係の探索のために、無菌マウスに特定の菌を接種したノトバイオートマウスをビニールアイソレーター内で作成する手技を確立した。皮膚常在菌を接種した野生型ノトバイオートマウスは明らかな皮膚炎などは起こさないが、皮膚を綿棒で擦過して菌を回収し培養することで、菌が安定して定着していたことを確認した。また菌株によって定着する菌量に差異がみられた。さらに皮膚炎モデルマウスを用いると、野生型マウスに比べて定着する菌量が多く認められた。これまでにマウスの皮膚から単離した皮膚常在菌株を用いて野生型ノトバイオートマウスを作成し、菌株の皮膚上での代謝活性や、また宿主の皮膚に含まれるステロイドの定量する手法を確立した。 解析対象とするヒト皮膚常在菌を選定するために、菌株の単離を準備した。具体的には臨床サンプルの採取と単離のための培地の選定を行い、今後の単離株取得に向けて準備を進めた。得られた臨床サンプルを菌叢解析で菌種の組成を明らかにして、準備した培地でどの程度の菌種を単離が可能かを試している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに採取したマウスや、主にアトピー性皮膚炎など患者の臨床サンプルから分離した単離株を用いてノトバイオートマウスの作成方法を検討した。無菌マウスへ菌を一度塗布して接種して、その後は経時的に皮膚の菌を回収して培養し、菌量を測定することで、投与した菌が安定して定着することを確認した。菌量は時間と共に徐々に減っていく傾向があるものの、複数回の菌接種などでより安定して菌をマウスの皮膚に定着させることが可能になると見込まれる。以上のようにノトバイオートマウスの作成手技は確立しており、今後は臨床サンプルから単離した菌株を用いてマウス実験を施行する予定である。しかし、コロナの影響があり臨床サンプルの収集が当初の予定よりも進まなかった。単離株取得に向けて複数種の培地を作成し、幅広い種の皮膚常在菌を取得できるように条件を検討している。現状では得られた臨床サンプルを菌叢解析で菌種の組成を明らかにして、準備した培地でどの程度の菌種を単離が可能かを試している。
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Strategy for Future Research Activity |
無菌マウスへの単離株の投与方法、菌の回収と菌量の測定法は確立しているため、今後は臨床サンプル及び単離株の取得に注力していく。健常人のリクルートは機会が少なく、また得られる菌量も少ないため、効率的な培養方法および単離方法を検討してなるべく多くの菌株を得られるようにする。また健常人からのサンプル取得が滞る場合には、アトピー性皮膚炎やそのほかの炎症性皮膚疾患患者から採取した臨床株を用いて、マウスへの投与および接種を検討していく。 作成したノトバイオートマウスに関して、菌の定着量を計測することや、宿主皮膚での代謝活性の変化などをRNA-seqなど遺伝子発現解析を行なって検討できるようにサンプルを採取する。また宿主ー微生物の相互作用をより詳細に明らかにするために、菌株間の違いに着目して菌のゲノム解析や宿主の遺伝子発現など比較解析を行えるように準備していく。
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Causes of Carryover |
使用を予定していた健常人皮膚からの菌株の取得が不十分であり、無菌マウスや物品の購入が該当年度は予定よりも少なくなった。翌年度に菌株の取得状況などを含めて、予定よりも多く無菌マウスなどを使用して実験を実施することを計画している。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Staphylococcus cohnii is a potentially biotherapeutic skin commensal alleviating skin inflammation2021
Author(s)
Ito Y, Sasaki T, Li Y, Tanoue T, Sugiura Y, Skelly AN, Suda W, Kawashima Y, Okahashi N, Watanabe E, Horikawa H, Shiohama A, Kurokawa R, Kawakami E, Iseki H, Kawasaki H, Iwakura Y, Shiota A, Yu L, Hisatsune J, Koseki H, Sugai M, Arita M, Ohara O, Matsui T, Suematsu M, Hattori M, Atarashi K, Amagai M, Honda K
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 35
Pages: 109052~109052
DOI
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