2023 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚癌の微小環境における免疫逃避と進展に関わる細胞外基質の役割の解明
Project/Area Number |
21K08321
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
尾山 徳孝 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30332927)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞外基質 / ECM1 / 腫瘍浸潤 / 腫瘍転移 / マウスモデル / 間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、昨年までの検討課題である以下の2項目を目的として、検討を行ってきた。 ① extracellular matrix molecule 1 (ECM1) 依存的な皮膚癌の運動機能転換および免疫回避能と連動する癌微小環境の変化を解析し、ECM1の癌間質制御分子としての可能性を検討する、②ECM1分子の挙動と連動する皮膚の細胞外基質を特定し、これらを標的とした新たな皮膚癌の治療応用への展開を模索する。①の目的を達成するため、ECM1欠損マウスに数種類の皮膚由来癌細胞株(有棘細胞癌細胞、黒色腫細胞)を植え付け、癌細胞の局所維持と進展機構の解析を試みた。すなわち、まずはコンベンショナルな手法でECM1遺伝子欠損マウスを作成することに挑戦した。しかしながら、予想されたごとく通常の遺伝子ノックアウト法では全例が胎生期に死亡することが確認された。この結果から、ECM1が単なる疾患感受性遺伝子としてではなく、発生学的にも重要な分子であることが確証された。
次に、1) コンディショナルノックアウト法による臓器特異的なECM1欠損状態を作成する手法、さらに2)培養皮膚線維外細胞をsiRNA法を使ってECM1遺伝子のみを欠損させる手法の異なる実験系へ切り替えながら、実験を継続中である。
ECM1遺伝子のノックアウトヒトモデルである皮膚粘膜ヒアリノーシスは、常染色体劣性遺伝形質であるが、胎児致死や生命予後には殆ど影響を及ぼさない遺伝病であることから、今回の結果はマウスのものとは異なることが分かった。ECM1がヒトとマウスの種間で異なる作用を持つ分子である点は、非常にユニークな検討結果である。この視点から、さらにECM1の未知なる生体内機能を模索していく予定である。
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