2022 Fiscal Year Research-status Report
3Dゲノム構造変換がもたらす悪性リンパ腫の進展とその分子機構の解明
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21K08370
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮崎 和子 京都大学, 医生物学研究所, 特定研究員 (00311811)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 3Dゲノム構造 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
3Dゲノム構造の変換が癌特有の遺伝子発現プログラムに寄与するのか検討するために、まず、リンパ腫発生モデルマウス(Id2/Id3欠損マウス)から正常細胞、前癌細胞およびリンパ腫細胞を単離し、それぞれの細胞を用いたHi-C実験結果を解析した。正常細胞と前癌細胞および前癌細胞とリンパ腫細胞のPC1 value (主成分解析結果)を比較したところ、3Dゲノム構造がacitveからinactiveまたはその逆に大きく変化した領域(Flipped region)は、正常細胞と前癌細胞とでは僅かしかなくゲノムワイドに構造の変化を殆ど認めない一方、前癌細胞とリンパ腫細胞とではFlipped regionが前者の20倍もあり、3Dゲノム構造が大きく変容することを見出した。そして、リンパ腫細胞における遺伝子発現の低下が判明していた癌抑制遺伝子Cdkn2aは、前癌細胞とリンパ腫細胞のFlipped region領域近辺に存在していた。そこで、Id2/Id3/Cdkn2aトリプルノックアウト(tKO)マウスを作製しリンパ腫発生を検討した結果、tKOではId2/Id3欠損マウス(dKO)よりも早期に致死的なリンパ腫を発症した。このことより、ゲノム構造が変化したことで癌抑制遺伝子の発現が抑制され異常な増殖に対する抑制ができないことが示唆された。 また、正常細胞と前癌細胞および前癌細胞とリンパ腫細胞を用いて、遺伝子発現の活性化の指標となるヒストン修飾(H3K27アセチル化)のChIP-seq解析を行った。このデータを用いて、現在それぞれのスーパーエンハンサー(SE)をROSE(RANK ORDERING OF SUPER-ENHANCERS)ソフトウェアで同定し、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサーを利用した実験はほぼ順調に行うことができ、作製した遺伝子改変マウスも解析できる状態になった。
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Strategy for Future Research Activity |
リンパ腫発生モデルマウスとId2/Id3/Cdkn2aトリプルノックアウトマウスを用いて研究を進めていく。また、ゲノム構造維持関連因子のノックアウトマウス作成も作製して合わせて解析を行いたい。
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Causes of Carryover |
次世代シークエンスを用いた実験に必要な試薬の一部とシークエンス費用の一部が、当初の見積もりでは今年度の予定であったものが、次年度になったため。次年度の実験費用として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)