2022 Fiscal Year Research-status Report
形質転換時の代謝リプログラミングにおけるC/EBPβの機能解明と治療戦略の開発
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21K08379
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
横田 明日美 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (00571556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平位 秀世 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (50315933)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 転写因子 / 代謝 / 腫瘍 / 白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍形成を誘導する細胞増殖性シグナルの活性化は、RAS等がん原性の遺伝子異常によってもたらされる。形質転換における細胞増殖の異常な亢進には、増殖の支持に十分な細胞構成成分や核酸を供給するために、代謝リプログラミングが起こることが重要である。先行研究において我々は、BCR-ABL導入・造血幹・前駆細胞(HSPCs)において脂肪細胞のマスター転写因子C/EBPβが脂質代謝関連分子の発現を正に制御していることを見出している。本研究では、造血器腫瘍で認められる細胞増殖性シグナル活性化の例として、NRAS変異、FLT3変異誘導性の白血病モデルを用いて、それらシグナルの下流分子として、脂質代謝制御を担うと同時に細胞の増殖・分化の均衡に重要な転写因子C/EBPβに着目し、検討を行なっている。 2022年度は、白血病モデルマウスの構築方法を、レトロウイルスによるNras-G12D変異およびFlt3-ITD変異導入マウス骨髄細胞の骨髄移植から、Cre誘導性Nras-G12D変異ノックインマウス、Flt3-ITD(internal tandem duplication)ノックインマウスに変更した。Nras-G12D変異の発現は、血液細胞特異的Vav1-iCreにて誘導を行う系を構築した。どちらも末梢血中白血球数の増加と貧血、また骨髄中のHSPC分画の増加を認めた。これらモデルのHSPC分画におけるC/EBPβの発現を調べたところ、mRNAとタンパク両方において増加しており、C/EBPβの標的遺伝子かつ脂質代謝に関連する遺伝子の発現レベルも増加していた。 これら白血病モデルマウスにおいて、Vav1-iCre誘導性にC/EBPβ遺伝子をノックアウトすると、白血病の表現型が著しく減弱することが明らかとなった。今後、そのメカニズムについて詳細を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モデルマウスの構築方法を、当初予定していたレトロウイルスによる白血病原因遺伝子の導入・骨髄移植から、遺伝子改変マウスに変更を行ったため、当初の計画よりも遅れが生じている。Nras-G12D変異ノックインマウス、Flt3-ITD変異ノックインマウスは、国内外の研究者から供与いただいた凍結精子・雄マウスを用いた人工授精によって目的マウスを得て、申請者の研究機関の動物施設に導入されたため、時間を要した。しかしながら、結果的には、両者遺伝子変異ともに、内在性のプロモーターによって発現が制御されるため、レトロウイルス強制発現系と比較して、実際の症例により近いモデルとなると考えられる。さらに、これら白血病マウスにVav1-iCreとCebpb floxアリルを導入し、白血病モデルマウスにおいて血液細胞特異的にC/EBPβ遺伝子をノックアウトした条件のマウスが現在、樹立できたところである。解析結果から、C/EBPβはNras-G12D変異およびFlt3-ITD変異によって誘導される白血病の病態形成において重要な役割を担うことが示唆された。これら遺伝子改変マウスによる白血病モデルマウスについて、さらに解析数を増やして検証を行い、またHSPCのRNA-seq解析、代謝解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在データ得られている白血病モデルマウスは、末梢血を1ヶ月おきに採取し、白血球分画のフローサイトメトリー解析と血算のデータを収集している経過途中である。交配によって新しく得られるマウスについて、これからさらに解析を行い、データ数を増やすと共に、マウスが致死的状態となる前に造血組織の解析を行う。末梢血に加え、骨髄細胞、脾臓細胞をフローサイトメトリーにて解析し、C/EBPβがそれぞれの白血病モデルの病態形成にどのような影響を与えるかを調べる。また、細胞ソーティングによって骨髄細胞からHSPCを含むc-kit陽性細胞を単離し、代謝関連遺伝子の発現、中でもC/EBPβの標的遺伝子として知られる脂質代謝関連酵素を中心に調べる。また、単離した骨髄c-kit陽性細胞を用いて代謝解析を行い、C/EBPβによる代謝経路の制御が、白血病の発症や進展に与える影響について調べるため、検討を行なっていく。
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Causes of Carryover |
2022年度に予算を計上していたアメリカ血液学会への参加費用について、コロナによる渡航制限によって参加を見送ったため、未使用となった。また、白血病モデルマウスから得られるサンプルを用いたRNA-seq解析や代謝解析のための費用については、モデルマウス構築の遅れから2022年度中に解析を行うことができなかった。 次年度使用額と合わせて、2023年度はこれら解析を行うと共に、研究成果の国際学会での発表を計画している。
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[Journal Article] The early neutrophil-committed progenitors aberrantly differentiate into immunoregulatory monocytes during emergency myelopoiesis2023
Author(s)
2.Ikeda N, Kubota H, Suzuki R, Morita M, Yoshimura A, Osada Y, Kishida K, Kitamura D, Iwata A, Yotsumoto S, Kurotaki D, Nishimura K, Nishiyama A, Tamura T, Kamatani T, Tsunoda T, Murakawa M, Asahina Y, Hayashi Y, Harada H, Harada Y, Yokota A, Hirai H, Seki T, Kuwahara M, Yamashita M, Shichino S, Tanaka M, Asano K.
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 42
Pages: 112165~112165
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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