2022 Fiscal Year Research-status Report
CXCL12-CXCR4軸による造血幹細胞制御に必須の細胞内分子の網羅的探索
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21K08393
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青木 一成 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (30618020)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CXCL12 / CXCR4 / CRISPR |
Outline of Annual Research Achievements |
CXCL12-CXCR4軸は造血幹細胞や急性白血病細胞の骨髄へのホーミング・骨髄での維持に必須であるが、造血幹細胞や急性白血病細胞においてCXCL12に対する応答性を制御している遺伝子は完全には明らかにされていない。造血幹細胞や急性白血病細胞のCXCL12応答性に必須の細胞内分子を網羅的に探索することを目的として、ゲノムワイドCRISPRスクリーニング技術をin vitroでのマイグレーションアッセイ系に応用した独自の順遺伝学的ゲノムワイドスクリーニングを実施し、既知のCXCR4やRHOAなどに加えて、複数の新規遺伝子を同定することができた。その中の1つの新規遺伝子に注目して解析を進めた。新規遺伝子がCXCL12に対するマイグレーション活性を抑制する分子メカニズムを解明するため、その新規遺伝子を欠失させた急性白血病細胞株を用いてRNA-seq、ATAC-seqを実施したところ、主にエンハンサー領域のクロマチンアクセシビリティが低下すること、その領域には特定の転写因子の結合モチーフが濃縮していること、その転写因子のターゲット遺伝子の発現が低下していることが明らかになった。さらに、アクセシビリティが低下している領域には、CXCR4のエンハンサー領域が含まれ、ChIP-qPCRにより、その領域へのその転写因子の結合が障害されていることが明らかになった。CXCR4のcDNAを過剰発現させると、新規遺伝子欠損により抑制されていたCXCL12に対するマイグレーション活性をレスキューすることができた。また、薬理学的手法を用いて今回同定した新規遺伝子がコードするタンパクの機能を抑制したところ、他の急性白血病細胞株や急性白血病Patient-derived xenografts 細胞でもCXCR4の発現が低下することをわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施したゲノムワイドCRISPRスクリーニング技術をin vitroでのマイグレーションアッセイ系に応用した独自のスクリーニングの解析結果から抽出された複数の新規遺伝子の中から、本年度は1つの遺伝子に注目し、その遺伝子の欠損がCXCL12に対するマイグレーション活性を障害させる分子メカニズムを解析した。RNA-seq、ATAC-seq、ChIP-qPCR等を実施することで、遺伝子欠損によりCXCR4のエンハンサー領域のクロマチンアクセシビリティが低下すること、CXCR4の発現に必須の転写因子のエンハンサー領域への結合が障害されること、CXCR4の遺伝子発現が著明に抑制されること、その結果としてCXCL12に対するマイグレーション活性が低下することを明らかにすることができた。さらに、薬理学的手法を用いて今回同定した新規遺伝子がコードするタンパクの機能を抑制し、スクリーニングで用いた急性白血病細胞株のみならず、他の複数の急性白血病細胞株や急性白血病Patient-derived xenografts 細胞でもCXCR4の発現が低下することをわかった。注目した新規遺伝子がCXCL12に対するマイグレーション活性を障害させる分子メカニズムの全貌を明らかにすることができ、本研究計画は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に同定した遺伝子がCXCL12応答性に必須であることを急性白血病細胞でしか示せていないので、今後さらに、正常造血幹細胞や、CXCL12-CXCR4軸が骨髄へのホーミング・骨髄での維持に必須である他の造血器腫瘍細胞株、具体的には多発性骨髄腫細胞株でも、CXCR4の発現に必須であるかどうかを解析する。また、新規遺伝子の欠損により、細胞自律的な細胞増殖が抑制されるかどうか、細胞周期やアポトーシスに影響を受けるかどうかを、CRISPR-Cas9技術によりcell competition assay、 Annexin V染色を用いたアポトーシスアッセイ、BrdUを用いた細胞周期解析により明らかにする。さらに、in vivoにおいて、正常造血幹細胞、白血病細胞、多発性骨髄腫細胞の骨髄へのホーミング・骨髄での維持に必須の役割を果たしているかどうかを、CRISPR-Cas9技術を用いた遺伝学的手法、ターゲット遺伝子がコードするタンパクの機能を抑制する阻害剤による薬理学的手法を用いて解析する。
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Causes of Carryover |
in vivoの機能解析の一部を次年度にまわしたため、次年度使用額が生じた。次年度はマウスを用いたin vivo機能解析を集中的に実施するため、全体としては予定通りの予算額を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)