2022 Fiscal Year Research-status Report
非定型3q26転座型骨髄性腫瘍のEVI1エピジェネティック制御機構解明と治療応用
Project/Area Number |
21K08414
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
蝶名林 和久 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (00646010)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非定型3q26転座型骨髄性腫瘍 / EVI1活性化 / 転写制御領域 / 疾患特異的iPS細胞 / BET阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画に沿って、令和4年度に下記の進捗があった。 1)次世代シークエンサーを用いた非定型EVI1遺伝子再構成MDS症例のゲノム解析:MDS-iPS細胞が樹立できた非定型EVI1転座陽性MDS症例の骨髄検体のターゲットシークエンスの再解析を行い、PTPN11、ETNK1、EZH2などMDSで高頻度に認められる変異を同定した。 2)MDS-iPS細胞を用いた病態再現:1)のMDS患者末梢血保存サンプルから正常T細胞由来iPS(T-iPS)細胞の樹立にも成功した。MDS-iPS、正常T-iPS細胞株を胚様体形成法を用いて造血誘導し、造血前駆細胞(CD34+)、成熟骨髄球系(CD14+)、赤血球系(CD235a+)の割合を検討したところ、正常T-iPS細胞株と比較してMDS-iPS細胞株において有意にCD34陽性率の上昇、CD14及びCD235a陽性率の低下を認め、元の症例で認めた血液成熟障害を反映していると考えられた。また造血前駆細胞分画でソートして、GMCSF、G-CSF、IL3、IL-6、SCF、EPO 存在下でコロニーアッセイを行ったところ、MDS-iPSではコロニー形成能が著明に障害されていたが、正常T-iPS細胞株では異常は認めなかった。 3)MDS-iPS細胞の網羅的エンハンサー解析:令和3年度に引き続き、MDS-iPS細胞株及び再分化させた造血前駆細胞のゲノムDNAを材料に、H3K27acのChIP-seqにより網羅的な転写調節領域の解析を行い、造血前駆細胞特異的に活性化しているプロモーター、エンハンサーを同定した。 4)スーパーエンハンサーを標的としたEVI1発現抑制:MDS-iPS細胞を用いて、3)で同定された転写制御領域を標的としてBET阻害剤JQ1によるEVI1発現抑制効果を確認し、Annexin Vアッセイで用量依存性のアポトーシス誘導効果を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、1)次世代シークエンサーを用いた非定型EVI1遺伝子再構成MDS症例のゲノム解析、2)MDS-iPS細胞を用いた病態再現、3)MDS-iPS細胞の網羅的エンハンサー解析、4)スーパーエンハンサーを標的としたEVI1発現抑制を計画していた。 1)、3)に関しては、上記のように、当初検討していた実験計画に関しておおむね順調に進展していると考えている。 2)に関しては、in vitroでの病態再現はおおむね順調に進展している。免疫不全マウスへのMDS-iPS由来造血前駆細胞の移植を行ったが生着が得られず、今の所MDSモデルマウスの作製はできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記2)、3)の課題を引き続いて行う。
4)MDS-iPS細胞の網羅的エンハンサー解析:BET阻害剤投与下でMDS-iPS細胞由来造血前駆細胞のH3K27ac ChIP-seqを行い、3)で同定したEVI1異常活性化に寄与している可能性が高いプロモーター、エンハンサーなどの転写制御領域の活性の抑制を確認する。また3)で同定された転写制御領域を標的として部位特異的にエピゲノム制御が可能なCRISPR-knockoutを行い、EVI1発現の低下を確認する。さらに2)の病態再現系を用いて、EVI1発現抑制に伴い増殖及び分化異常の表現系が改善するかどうか検討する。
5)マウスモデルによる薬効評価:2)の病態再現において、MDS-iPS細胞由来造血前駆細胞の移植によるMDSモデルマウスの作製は困難であったため、ストローマ細胞であるOP9細胞と共にMDS-iPS細胞を免疫不全マウスに移植して形成されたテラトーマの中に骨髄再構築可能なヒト造血幹細胞様細胞が誘導されることを利用したテラトーマ法を用いて、モデルマウスの作製を目指す。この免疫不全マウスによる病態再現系を用いて、4)で選定されたBET阻害剤などのin vivoでの薬効評価を確認する。この際、同一症例由来の複数のiPS細胞株で構築したヒト化白血病マウスモデルを用いることで、各iPS細胞株の由来サブクローンの造腫瘍性を個別に検討し、薬剤感受性の差異についても検討する。
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Causes of Carryover |
理由:令和4年度は、次世代シークエンサーを用いた非定型EVI1遺伝子再構成MDS症例のゲノム解析、MDS-iPS細胞を用いた病態再現、MDS-iPS細胞の網羅的エンハンサー解析、スーパーエンハンサーを標的としたEVI1発現抑制を行った。病態再現においてMDSの顕著な表現型がみられたため、当初の予定よりも少ない株数においてゲノム解析・病態再現・網羅的エンハンサー解析を行うことが可能であったため、細胞培養・分化誘導やシークエンス解析等のコストが当初予定より少なくなり、未使用額が生じた。また、血液分化誘導系として用いた胚様体形成法に関して、サイトカインコンビネーションやタイミングを最適化することで、当初の予定よりも少ない液量で必要量の造血前駆細胞をiPS細胞から誘導することが可能であったため、分化誘導培地やサイトカインのコストが当初より少なくなり未使用額が生じた。 使用計画:上記理由のため、次年度は、予定より解析対象細胞株数を増やして、MDS-iPS細胞の網羅的遺伝子発現解析を行う予定である。また特異的エンハンサーを標的としたCRISPR-knockout後やBET阻害剤投与後のMDS-iPS由来造血前駆細胞を用いたH3K27ac ChIPseqも行う予定であり、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(1 results)