2023 Fiscal Year Research-status Report
レドックス制御に基づいた急性骨髄性白血病の治療応用
Project/Area Number |
21K08432
|
Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
山嵜 博未 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(上席・主任研究員クラス) (20720915)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | Bリンパ球 / 脂質過酸化 / セレノプロテイン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにTrsp KOマウスがPro-B細胞以降の分化・成熟異常を示すこと、Trsp KOマウスへのフェロトーシス阻害剤ビタミンE欠乏食の投与は、活性酸素の蓄積を伴ったBリンパ球の分化障害を加速させたことを明らかにしたが、当該年度では、ビタミンE過剰食投与が同表現型を部分的に回避することを見出し、過酸化脂質蓄積を伴うフェロトーシスとBリンパ球分化障害の関連を明らかにした。さらに興味深いことに、Trsp KOマウスのB前駆細胞はBリンパ球分化の制御因子の発現低下および骨髄球分化関連遺伝子の発現上昇を示した。そこでB前駆細胞の移植実験により個体レベルでのB前駆細胞の分化能を検討したところ、Trsp KOマウス由来のB前駆細胞の一部がレシピエントマウスにおいて骨髄球系マーカー陽性細胞となっていたことから、Bリンパ球系から骨髄球系への分化スイッチの可能性が示唆された。 また、Trsp KOマウスは造血幹細胞の機能低下、B細胞および赤血球の減少といった老化の特徴を示すため、セレノプロテイン合成破綻と老化との関連に着目した。実際、高齢ヒト造血幹細胞においてセレノプロテイン合成系遺伝子の発現が低下すること、Trsp KOの造血幹前駆細胞では老化関連経路が有意に上昇していたことを見出し、Trsp KOマウスが老化モデルの一つとして有用である可能性が示された。 また白血病発症におけるセレノプロテインの役割を明らかにするためにROSA26CreERT2: Trspflox/flox造血幹細胞にMLL-AF9を発現させた連続移植可能な白血病モデルを樹立した。タモキシフェンを投与によりTrsp欠失を誘導するとAML発症が抑制され、有意な生存の延長を示したことからセレノプロテインが白血病の維持に寄与することが個体レベルで示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Bリンパ球の分化異常についてビタミンE過剰食投与によるレスキュー実験、B前駆細胞の移植実験、in vitro分化系等の複数の解析を用いて詳細に解析することができた。また老化の観点からもTrsp KOマウスの性質についてアプローチを行った。さらに、マウス白血病モデルを用いたTrsp欠失系を樹立し、白血病におけるセレノプロテインの重要性を示すことができ、順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
セレノプロテインとその合成系を標的としたsgRNAライブラリーを作成しCRISPRスクリーニングを行い、正常造血と腫瘍性造血における依存するセレノプロテインの違いを明らかにし、治療標的を特定するための解析を進めている。正常造血についてもこのライブラリーを用いてin vivo CRISPRスクリーニングを行い各分化段階における主として働くセレノプロテインを特定する方針で実験を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍に始まった研究課題であり、研究試薬・消耗品が計画通り入手できない期間があり最終年度である当該年度に延長申請を行っため。
|
Research Products
(2 results)