2021 Fiscal Year Research-status Report
Fab抗IgE抗体を用いたI型アレルギー疾患の治療
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21K08447
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
平野 隆雄 順天堂大学, 医学部, 特任教授 (10165186)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | IgE / 抗Fab-IgE抗体 / I型アレルギー / 即効性 / 特効薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
喘息、花粉症、食物アレルギーに代表されるI型(即時型)アレルギー疾患のモデル動物に著効する抗IgE抗体Fab(クローン名6HD5)の作製に成功した(Hirano T et al. scientific reports 2018 )。抗体Fab(6HD5)はマスト細胞上の高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合するIgEに直接作用して、即効的にアレルギー反応を長期間阻止することを見出した。エピトープ解析から、この抗体はIgEのFc領域のCH2ドメインに結合することが明らかとなった。CH2ドメインはIgE-FcεRI複合体の機能を維持する上で重要な部位である。従って、抗体Fab(6HD5)はIgE-FcεRI複合体の機能を著しく低下させて、IgEとアレルゲンによるマスト細胞の活性化を阻止すると考えられた。この研究の中心であるFab抗IgE抗体の詳細を解析して、ヒト型Fab抗IgE抗体を開発し、I型アレルギー疾患の新しい治療に貢献したいと考えている。もう一種類のFab抗体であるHMK-12はペプシン処理のIgE(ab')2 であるdivalent分子のみに結合することがウエスタン・ブロットなどで解析されており興味ある抗体である。IgE(ab')2の結合 部位(エピトープ)について構造解析を播磨理研(BINDS)との共同研究にて進行している。 令和3年度では、研究成果としてFab抗IgE抗体(Fab-6HD5,HMK-12)は即効性であり抗原投与前後の5,10分に抑制機序があることが判明した。またHMK-12のエピトープ解析において播磨理研グループ(Amed-BINDs)が構造結晶解析の手法を用いてその結合部位がFcε2(ab)2に存在することを見出した。この結果を国際誌に発表し、ヒトFab-抗IgE体のhybridomaを作成して今後の研究に繋げたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Fab抗IgE抗体を用いたI型アレルギー疾患の治療 1.Fab抗IgE抗体(HMK12)のI型アレルギー反応を即効性に阻止することをin vivoで 明らかにする。(令和3-令和4年度) 即効性の効果を観察するために,抗原投与前後にIgE抗体を投与早期:5,10分などにアレルギ ー反応を阻止するかどうかを検討する。PCA反応において、アレルギー反応出現後 (アレルゲン投与後)であっても抗アレルギー効果があるかを検討した。 上記の実験に関しては、in vivoのPCA反応において10、15分でアレルギー反応を抑制することが判明した。2.Fab抗IgE抗体(HMK-12)のマスト細胞上に固着したIgEに対するエピトープ明かにする。Fab(6HD5)は、IgECH2と結合することは前述の論文で明らかになったが、CH2のどの部分に結合するかを検討する。もう一種類のFab抗体であるHMK-12はペプシン処理のIgE(ab')2 であるdivalent分子のみに結合して、IgE-Fab のmonovalentの分子やIgE-FCには反応しない ことがウエスタン・ブロットなどで解析されており興味ある抗体である。IgE(ab')2の結合 部位(エピトープ)について構造解析を播磨理研(BINDS)との共同研究にて進行している。最近、播磨理研での結晶解析の研究成果によりHMKー12のエピトープの解析が進みFcε2(ab)2に結合する詳細が判明した。現在国際誌への投稿を急いでいる。 I型アレルギー機序において、マスト細胞・結合IgEを標的とした、新しい機序・機構を応用した即効性の特効薬の開発が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回我々はFab抗IgE抗体(Fab-6HD5,Fab-HMK-12)はマスト細胞上に固着したIgEに結合して即効性かつ長期間にI型アレルギーの抑制機序があることが判明し、これが今後I型アレルギー疾患の有力な治療薬になり得ると考えている。(Hirano T et al. scientific reports 2018 )本抗体のIgE結合部位はFcε2であり、Omalizumabの結合部位であるFcε3とは異なる.分子量約5万の低分子で、副作用少なく臨床応用が期待される。 前述に記載したが、Fab-HMK-12は播磨理研の結晶構造解析によりFcε2(ab)2を認識する抗体と判明した。これらの実験結果を国際誌に発表する。創薬としてヒト化Fab抗IgE抗体を作成するため、マウスにヒトIgE ミエローマ蛋白を免疫してhybridomaを作成する。マウス抗ヒトIgE抗体を作成して、HMKー12と同様の作用のあるモノクローナル抗体を確立する。このようにヒト化Fab-抗IgE体を作成出来たら動物実験や臨床治験を計画する。全ての研究に成果が得られると次のような臨床効果が期待できる。花粉症時期に当日Fab抗IgE抗体を投与しておくと、花粉症症状を防御出来る。食餌アナフィラキシー及び各種アナフィラキシーの起こった症例にこの抗IgE抗体を投与するとそれを防御し、致死的状況を回避が期待される。各種I型アレルギー疾患(喘息、アレルギー性鼻炎など)で有力な治療薬と成りうる。I型アレルギー機序において、マスト細胞・結合IgEを標的とした、新しい機序・機構を応用した抗アレルギー薬の登場である。臨床応用が期待される。
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Causes of Carryover |
令和3年度のシークエンスの研究費が予想より低額だっため令和4年度に試薬などを購入する予定でである。
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