2021 Fiscal Year Research-status Report
Single-cell analysis and identification of inflammatory osteoclasts responsible for the pathophysiology of rheumatoid arthritis
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21K08464
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
横田 和浩 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (20406440)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / 骨破壊 / 破骨細胞 / RANKL / 炎症性サイトカイン / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
関節リウマチの特徴の一つは、関節近傍に生じた骨破壊であり、活性化された破骨細胞による骨破壊の促進により進行する。この破骨細胞の分化は、破骨細胞分化因子(RANKL)により調節されている。これまでに私たちは、破骨細胞前駆細胞であるマウス骨髄単球およびヒト末梢血単球を炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF-α)とインターロイキン-6(IL-6)で刺激することにより、従来のRANKL誘導性破骨細胞とは性質が異なる、新規TNF-αとIL-6誘導性破骨細胞(炎症性破骨細胞)が分化することを発見した(Arthritis & Rheumatology, 2021)。 従来のRANKL誘導性破骨細胞と新規のTNF-αとIL-6誘導性炎症性破骨細胞との異同をさらに明らかにするために、それぞれの細胞におけるシングルセル解析での遺伝子発現について比較検討・解析した。 健常人の末梢血単球から分化した破骨細胞と炎症性破骨細胞をシングルセル分離装置を用い、単離・回収した。回収した細胞のシングルセルからtotal RNAを抽出し、cDNA合成、高感度な全長cDNAの調整を行い、次世代シークエンサーを用いてすべての遺伝子のRNA発現を解析した。 その結果、炎症性破骨細胞は破骨細胞とは全く異なり、炎症性サイトカイン・ケモカインを高発現していた。この中から炎症性破骨細胞に特異的に発現し、関節リウマチの病態に関わる「Gene X」を同定した。炎症性破骨細胞における「Gene X」 mRNAと蛋白発現について、定量的real-time PCR法、蛍光免疫染色法にて再現性があることを確認した。 以上のことから、炎症性破骨細胞と破骨細胞は、遺伝子発現が全く異なる細胞であることが明らかになり、炎症性破骨細胞が高発現している炎症性サイトカイン・ケモカインが関節リウマチの骨破壊の病態を担う可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者が所属する機関である埼玉医科大学病院は感染症指定病院であり、新型コロナウイルス感染症のパンデミック禍において、埼玉県北西部から最も多くの重症新型コロナウイルス感染者を受け入れている。令和3年度において、申請者は埼玉医科大学病院の重症COVID-19患者の診療(主に副腎皮質ステロイドなどの免疫抑制療法の使用)に従事した。その診療の結果、多くの学内の先生方の支援を頂き、COVID-19患者に対するステロイドパルス療法の有効性についての英語原著論文を作成・出版した(Yokota K, Noma H, Tarumoto N, Ishibashi N, Sakai J, Maesaki S, Iida S, Uchida Y, Uchida T, Nakayama H, Haga Y, Mimura, T. A Retrospective Observational Cohort Study on the Efficacy and Safety of Methylprednisolone Pulse Therapy for COVID-19 Pneumonia. COVID 2(3):244-253, 2022)。 このように申請者は、新型コロナウイルス感染患者の診療に熱心に取り組み、埼玉県の新型コロナウイルス感染症患者の救命率の向上のみならず、新型コロナウイルの感染拡大防止に尽力した。その一方で大変残念なことに研究に費やす時間が失われてしまい、当初の計画以上に進展することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
シングルセル解析の結果、多くの候補遺伝子を同定し、最も特異的な遺伝子「Gene X」を同定した。しかし、これ以外にも重要な遺伝子が存在する可能性を秘めており、候補遺伝子の絞り込みを継続して行う。また、炎症性破骨細胞における「Gene X」の蛋白発現について、蛍光免疫染色法のみならず、western blotting法やELISA法(培養上清)で確認する。そして、健常人のみならず、関節リウマチ患者の末梢血単球から分化した破骨細胞における「Gene X」の発現について、比較検討・解析する。さらに「Gene X」の誘導因子(例えば、炎症性サイトカイン、ケモカイン、成長因子など)を同定する。 炎症性破骨細胞および破骨細胞の分化におけるエピジェネティクス制御を解明する。健常人の末梢血から分離した単核球をM-CSF、TNF-αとIL-6およびRANKL刺激・培養で炎症性破骨細胞および破骨細胞へ分化誘導させる。炎症性破骨細胞および破骨細胞におけるエピゲノムの違いをChIP-seq法、ATAC-seq法などを用い、ヒストンマーク(プロモータ領域の存在を示すH3K4me3、エンハンサー領域を示すH3K4me1とH3K27ac)、クロマチンアクセシビリティなどの面で比較する。ATAC-seq法にてオープンクロマチン領域が明らかにでき、結合する転写因子の解析から、炎症性破骨細胞と破骨細胞が異なる転写因子による制御を受けることを明らかにする。それぞれの細胞における特異的エピゲノム変化およびその特異的遺伝子に関して詳細を明らかにするとともに、候補遺伝子ノックダウンによる炎症性破骨細胞および破骨細胞の分化誘導能、機能、生存への影響などの解析を行う。その結果、炎症性破骨細胞および破骨細胞の特異的なエピジェネティクス制御機構の一端が明らかになる。
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Causes of Carryover |
理由: ① 申請者が所属する機関である埼玉医科大学は感染症指定病院であり、多くの新型コロナウイルス感染者を受け入れ、申請者は新型コロナウイルス感染患者の診療に熱心に取り組んだ。そのため、研究に従事する十分な時間が失われてしまった。次年度は新型コロナウイルスパンデミック禍が終息に向かうことを願うとともに昨年度の経験を活かして、研究にも従事出来るような体制を整えて臨む。② 予想以上に実験を行うことが出来ず、請求していた助成額よりも使用額が少なくなってしまった。そのため、培養に使用予定であったリコンビナントサイトカイン、培地、ウシ胎児血清、抗生物質、破骨細胞染色キット、PCR試薬、蛍光免疫染色試薬などの使用頻度が少なくなってしまった。③ 2021年に米国リウマチ学会へ参加・発表予定であったが、新型コロナウイルスパンデミック禍から同学会へのWEB発表となった。そのため、旅費が発生しなかったことから次年度使用額が生じてしまった。 使用計画:① シングルセル解析結果から得られた他の候補遺伝子の炎症性破骨細胞での発現について、PCR法・western blotting法・蛍光免疫染色法試薬を用いて解析する。② 前述の「Gene X」の炎症性破骨細胞での発現について、関節リウマチ患者由来の末梢血単球を用いて検討する。③ 「Gene X」の制御因子の同定および機能の解析を行う。
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Research Products
(6 results)