2021 Fiscal Year Research-status Report
T細胞早期老化モデルマウスを用いたワクチン有効率改善方法の検討
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21K08492
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
松本 哲 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (90363233)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Menin / Tfh / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢に伴う免疫系の老化は、免疫機能の低下を引き起こし、慢性炎症や発がん、感染症を起こしやすくすることから、免役系細胞の老化誘導機構を解明しその制御法を検討することは有意義である。腫瘍抑制因子MeninをT細胞特異的に欠損させると、細胞老化の特徴の一つである炎症性サイトカイン産生が亢進すること、さらには記憶T細胞への分化が抑制されることを報告した。 このT細胞早期老化モデル(T細胞特異的Menin欠損)マウスにおいて、抗原接種後の抗体産生量の低下が見られたことから、抗体産生低下機構を解析した。初年度は、抗原とアジュバント、接種部位を変えて様々な条件で、抗原特異的な抗体を確認することで、抗原特異的な抗体産生量の低下がT細胞早期老化モデルマウスで常に見られるか検討した。その結果、実験に用いた条件下ではクラススイッチの誘導は見られるものの、抗原特異的な抗体産生量がモデルマウスで低下していた。また、複数回の抗原追加接種でも抗原特異的抗体産生量が野生型に比べ上昇しなかったことから、Menin欠損T細胞による抗体産生の誘導が障害されていることが明らかとなった。次に、抗体産生を誘導する濾胞型ヘルパーT(Tfh)細胞への分化を検討したところ、脾臓におけるTfh細胞数は野生型と同程度であった。しかしながら、単離したTfh細胞において、抗体産生を促進するための複数のサイトカイン遺伝子の発現が減少していたことから、Meninを欠損したTfh細胞は、抗体産生ヘルプ機能が不十分である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
T細胞特異的にMeninを欠損させたマウスに13価抱合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)もしくはDNP-OVAを接種し、抗原特異的な抗体量を経時的に測定した。T細胞早期老化モデルマウスでは、1回の抗原刺激によって上昇する抗体価だけでなく、数週間後に追加接種した際の抗体価の上昇も抑制されていた。このことは、加齢に伴う免疫機能の低下により高齢者でワクチン有効率が低下することと類似しており、当初の予定通りの研究を行い、最終的にワクチン有効率の回復を検討することにする。 B細胞が抗原特異的抗体を産生するためにはCD4T細胞のヘルプが必要であることから、Tfh細胞への分化を検討した。Meninを欠損させたCD4T細胞のTfh細胞への分化は、野生型と同様であり、B細胞活性化に必要ななCD40Lの発現も見られた。しかしながら、Meninを欠損したTfh細胞においては、抗体産生に必要なサイトカイン遺伝子の発現が低下していたことから、Meninを欠損することで機能的なTfh細胞が形成されてない可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、抗原特異的な抗体産生の原因を探る目的で、抗原刺激後の脾臓やリンパ節における胚中心の形成過程を観察し、B細胞とTfh細胞との相互作用に対するMeninの影響を検討する。また、Tfh細胞応答の持続やメモリーTfh細胞の生成に、転写因子Tox2が重要であると昨年報告されたことから、MeninがTox2の制御に関わっているか、また現在見られている応答にTox2が関与しているか検討する。 次に当初の予定通り、肺炎球菌ワクチン(PCV13)を接種した後に肺炎球菌を感染させ、T細胞特異的Menin欠損マウスにおけるワクチン効果を検討する。T細胞早期老化モデルマウスにおいてワクチン有効率が減少していた場合、in vitroにおいてMenin欠損T細胞の早期細胞老化様形質を抑制することが確認できている低分子化合物Xを投与することで抗原特異的な抗体産生が回復するか検討する。抗体産生が低分子化合物Xにより改善された場合は、マウスに肺炎球菌の感染実験を行いワクチン効果を検討する。
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