2021 Fiscal Year Research-status Report
抗酸菌産生Dアミノ酸とマクロファージの感染防御メカニズムとの関連性についての検討
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21K08495
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
多田納 豊 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 准教授 (70432614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗像 達夫 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 准教授 (30320261)
冨岡 治明 安田女子大学, 心理学部, 教授 (40034045)
佐野 千晶 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (70325059)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / MAC / マクロファージ / 抗酸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
MAC(Mycobacterium intracellulare N260株)で産生が認められている5種類のD-アミノ酸について、マクロファージ細胞株(RAW264.7細胞)に及ぼす影響を、RNAseq解析により検討した。その結果、以下の遺伝子発現変動が認められた。 ペプチドグリカンの構成アミノ酸であるD-Alaでは、脂肪酸代謝関連遺伝子やカチオン性イオントランスポーター関連遺伝子の増加と、コラーゲンを主とする細胞外マトリックス形成関連遺伝子発現の減少が認められた。他方、同様にペプチドグリカンの構成アミノ酸であるD-Gluでは、CCR2の増大や細胞傷害応答遺伝子の増加と、イオンチャネルやトランスポーター、細胞外マトリックス形成遺伝子関連やコラーゲン代謝関連遺伝子の発現低下が認められた。ペプチドグリカンを構成するD-アミノ酸は、いずれもマクロファージにおけるイオン輸送系および細胞外マトリックス関連遺伝子の発現に影響を及ぼす可能性が示唆された。 また、D-Aspにおいては、金属イオン結合タンパク質遺伝子やVEGFR関連遺伝子、細胞傷害応答遺伝子が増加と、リン脂質および糖脂質生合成関連遺伝子が減少が認められ、上記のD-Gluとともに酸性アミノ酸に共通して、細胞障害応答遺伝子の増大が認められた。さらに、他の2種のD-アミノ酸については、VEGFR関連遺伝子の増加や、リボソーム形成関連遺伝子およびミトコンドリア形成関連遺伝子の減少といった共通した変動が認められた。 また、これら5種のD-アミノ酸の中にIFNGやIL-1などのサイトカイン関連遺伝子の発現変動が認められたものがあった。 現在、RNAseq解析により認められたこれらの遺伝子発現変動について、再現性を含め、より詳細な検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は新設学部への異動の2年目であり、研究・教育環境を整えるために大学運営(新学部設立)に関するエフォートが非常に大きく、多くの時間を要したため、研究に対するエフォートを十分に確保することが困難であった。加えて、2020年度から続くコロナ禍の影響により、機器導入や大学運営をはじめ、多くの場面で支障をきたした。また学年進行に伴い、教育の負担も大きくなり研究活動の時間の確保に苦慮している。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAseq解析の結果から候補となった遺伝子(脂肪酸代謝関連遺伝子、カチオン性イオントランスポーター関連遺伝子、細胞外マトリックス形成関連遺伝子、細胞接着制御関連遺伝子、リン脂質および糖脂質生合成関連遺伝子やミトコンドリア形成関連遺伝子など)を標的として、Real-Time PCR、ELISAおよびフローサイトメトリーなどにより、RAW264をはじめ、J774.1や、ヒトマクロファージ細胞株における遺伝子レベルおよびタンパク質レベルでの発現解析を行い、マクロファージの活性化や分極化との関連性について検討を行う。 また、ある種のアミノ酸においてサイトカイン関連遺伝子の発現変動の可能性が示唆されたため、サイトカイン産生誘導との関連性について、詳細な検討を行う。 また、これらの詳細な検討により変動が明らかとなった遺伝子については、MACのマクロファージ内増殖能(またはマクロファージの抗菌活性)との関連性について、細菌の増殖能を指標とした検討により明らかにする。
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Causes of Carryover |
2021年度は新設学部への異動の2年目であり、研究・教育環境を整えるために大学運営(新学部設立)に関するエフォートが非常に大きく、多くの時間を要したため、研究に対するエフォートを十分に確保することが困難であった。加えて、2020年度から続くコロナ禍の影響により、機器導入や大学運営をはじめ、多くの場面で支障をきたした。そのため、予定していた実験を予定通りに進めることができず、一部次年度使用額が生じることとなった。 次年度に定量的PCRやRNAseqの追試などを行う予定であり、今回生じた次年度使用額分の予算が必要となる。
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