2023 Fiscal Year Annual Research Report
小児の急性致死性脳炎の原因ウイルスに対する治療薬候補のマウスモデルを用いた評価
Project/Area Number |
21K08502
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
伊藤 睦代 (高山睦代) 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 室長 (70392313)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 急性脳炎 / 治療薬 / 動物モデル / SCIDマウス / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
ラブドウイルス属に属するChandipura virus(CHPV)はインドにおいて小児の急性脳炎のアウトブレイクを起こすことが知られている。その致死率は50-70%と極めて高いが、有効な治療法は確立されていない。本研究ではFavipiravirおよび選択された薬剤のin vitro およびin vivoでの薬効評価を行うことを目的としている。 昨年度までにスクリーニングによって、CHPVの増殖を抑制する薬剤として選択された4つの薬剤のうちNiclosamideとNelfinavirがin vitroで双方向性に相乗効果を示すことを明らかにした。Niclosamideは駆虫薬として知られており、抗炎症作用、アポトーシス阻害作用を持ち、広範囲のウイルスに対して抗ウイルス作用を示すことが報告されている。抗HIV薬であるNelfinavirは、HIVのウイルスプロテアーゼを阻害することが分かっている。一方、近年SARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果が報告されており、動物モデルにおいて、ウイルス量の減少がないにも関わらず、肺への好中球の浸潤増加と症状の軽減が見られており、immunomodulatorとしての働きが示唆されている。これまで我々はSCIDマウスを使用してきたが、両薬剤の特性からin vivoでの効果解析には、免疫システムが正常に機能しているモデル動物が必要だと考えた。そこで、エボラウイルスやSARS-CoV-2でも用いられているハムスターを候補として実験を行った。その結果、CHPVを腹腔内及び皮下に接種した場合、12匹中2匹の成熟ハムスターで致死的となった。CHPVは通常成熟げっ歯類で致死性を示さないため、ハムスターは有望なモデルであると考えられた。一方、他個体は体重減少後回復しており、CHPVのげっ歯類への順化が必要であると示唆された。
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