2021 Fiscal Year Research-status Report
Role of FDXR in Iron Metabolism and Glucose Metabolism in Liver
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21K08524
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐久間 一基 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (70791721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 知明 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (50447299)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 糖尿病 / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)・糖尿病ではインスリン抵抗性増大に伴う肝糖新生亢進が高血糖の一因となるが、その病態は複雑で十分には解明されていない。肝臓は生体内で最も多くの貯蔵鉄を有し、NAFLDにおいて肝鉄過剰蓄積が高頻度にみられる。本研究は、ミトコンドリアでのヘム・鉄硫黄クラスター合成に作用するferredoxin reductase (FDXR)に着目して、鉄代謝調節の変容が引き起こす糖代謝やNASH/NAFLDへの影響とそのメカニズムを明らかにすることを目的とした。 肝がん細胞株HepG2細胞において、siRNAによるFDXRノックダウン、アデノウイルスによるFDXR過剰発現をそれぞれ行い、細胞外フラックスアナライザーによるミトコンドリア酸素消費量の測定を行った。FDXRノックダウンでは、コントロール群とくらべて酸素消費量の低下を認めた。逆に、FDXR過剰発現で、酸素消費とATP産生の増加を認めた。興味深いことに、クエン酸鉄添加条件下では、FDXR過剰発現による酸素消費とATP産生の増加が顕著となった。以上より、HepG2細胞において、FDXRはミトコンドリアにおいて酸素消費とATP産生作用を持つことが示された。 次に、生体でのFDXRの意義を明らかにする目的で、AAV8-TBG-FDXRをマウス尾静脈より投与して、FDXRの肝臓特異的過剰発現を行い、呼吸代謝測定用マウス摂食・運動量測定装置を用いて、コントロール群と比較検討した。FDXR過剰発現マウスでは、酸素消費量、Energy Expenditureがコントロール群と比較して、上昇を認めた。これらの結果は、FDXRが生体においてもミトコンドリア機能制御を果たすことを示した新たな知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AAV8-TBG-FDXR、GalNAC-ASOをそれぞれ用いて、肝臓特異的FDXR過剰発現もしくはノックダウンする系を構築しており、現在同マウスのフェノタイプ解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
FDXRの肝臓特異的過剰発現マウスの検討で、FDXRは肝鉄蓄積の抑制とミトコンドリア機能制御を果たすことを認めており、FDXRが鉄代謝制御、ミトコンドリア機能制御を介して肝臓におけるインスリン抵抗性を制御する可能性が示唆される。今後、マウスのフェノタイプ解析を下記の実験計画で進め、FDXRがNAFLDの進展、糖・脂質代謝における役割を明らかにしていく予定である。 ①生体糖代謝プロファイルと組織学的検討:ブドウ糖負荷試験、ピルビン酸負荷試験、グルコースクランプ試験で、耐糖能、糖新生、インスリン抵抗性を評価する。加えて、鉄添加高脂肪食負荷を行い、脂肪肝、肝線維化、肝癌の発症を評価する。 ②肝代謝フラックス解析:LC/MS/MSを用いた肝臓での脂質プロファイルの同定とPINTA(positional isotopomer nuclear magnetic resonance tracer analysis)を用いてTCA回路を担うクエン酸合成酵素と糖新生を担うピルビン酸カルボキシラーゼのフラックス解析を行う。 ③Single Cell解析(scRNA-seq/bulk RNA-seq)とnon-target proteomicsを用いた多階層解析および生体情報との統合解析:マウス肝臓組織を用いたscRNA-seq(bulk RNA-seqと対比)と組織プロテオーム解析を行い、鉄代謝調節分子群、糖代謝制御分子群、脂肪酸代謝分子群を網羅的に解析し、ミトコンドリア鉄代謝とNAFLD病態の接点解明を行う。
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Research Products
(4 results)