2021 Fiscal Year Research-status Report
1型糖尿病に対する膵島特異的自家樹状細胞ワクチン開発のための基盤研究
Project/Area Number |
21K08525
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中條 大輔 富山大学, 学術研究部医学系, 特命教授 (30640528)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸邉 一之 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (30251242)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 1型糖尿病 / 自己免疫 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
1型糖尿病は細性性免疫による膵ベータ細破壊を主因とした自己免疫疾患であるが、膠原病等と異なり、成因である自己免疫を制御する治療法が確立されていない。そこで本研究では、申請者が行ってきた1型糖尿病患者の膵島抗原特異的細胞性免疫反応のデータをもとに、(1)1型糖尿病発症における責任抗原エピトープを明らかにし、(2)患者ごとの責任抗原エピトープで教育した自家樹状細胞を用いて膵島抗原特異的病原性T細胞の活性を制御することを試みることを目的に解析を進めている。 2021年度は、現在凍結保存されている、急性発症1型糖尿病患者:20名、劇症1型糖尿病患者:18名、緩徐進行1型糖尿病患者:18名、対照健常人:17名から採取した末梢血単核球(PBMC)を用いて、責任抗原エピトープを明らかにするための解析を開始した。申請者の先行研究では膵島抗原ペプチドを複数含むペプチドクラスターを用いて抗原レベルでの解析を実施したが、今回はその先行研究でT細胞反応を誘発したクラスターに含まれる各ペプチド単体での刺激を行うことで、エプトープの同定を試みた。アッセイにおける至適ペプチド濃度を決定した後、膵島抗原ペプチドで患者PBMCをIL-2存在下で刺激・培養し、フローサイトメトリーにてサイトカイン産生T細胞の割合を解析した。患者PBMCを抗原ペプチドクラスターGAD65-C1に含まれる抗原ペプチドGAD65-p1~p5で刺激したところ、GAD65-p1(アミノ酸配列:115-127)の刺激によってIFN-g産生性T細胞(Th1)の強い反応が見られ、これを責任抗原エピトープと判断することができた。 今後は解析症例を蓄積し、明らかにした責任抗原エピトープを用いて(2)の免疫制御の試みを進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵島抗原ペプチド単体で患者PBMCを刺激し適切な反応を得るため、複数のペプチド濃度での実験を行なったが、至適濃度の決定に時間を要した。 また、解析のために共同研究機関が保有する機器を使用する必要があったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、他県への移動が制限されていたことも影響を及ぼした。
|
Strategy for Future Research Activity |
1型糖尿病発症における細胞性自己免疫反応を司る責任抗原エピトープを同定するアッセイが確立されたため、今後は複数の症例において解析を進めていく。各症例における責任抗原エプトープが明らかになれば、次のステップとして、症例ごとの責任抗原エピトープで教育した自家樹状細胞を用いて、膵島抗原特異的病原性T細胞の活性を制御するためのアッセイを実施する。このアッセイでは、患者PBMCから単離したCD14陽性単球に種々のサイトカイン等を加えることで制御性樹状細胞を作成する。さらに、責任抗原ペプチドで教育した制御性樹状細胞でCD4陽性T細胞を刺激することで、細胞性免疫反応の制御を試みる。海外への渡航が可能となれば、制御性樹状細胞の効率的な培養手法を習得するために海外の先端研究施設への訪問も検討する。 1型糖尿病に対する患者個々の責任抗原エピトープを用いたテーラメイド自家免疫細細胞療法の開発は世界でも前例がなく新しい試みである。本研究が発展し臨床応用に至れば、患者の内因性インスリン分泌の保持を介して、発症時や膵島移植後の1型糖尿病患者のQOLを劇的に改善させ、根治療法や予防的介入法の開発に向けて大きな一歩となり得ると考えられる。
|