2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of molecular mechanisms of metabolic disorders caused by de-coupling Glucose/Fructose metabolism.
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21K08542
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
満島 勝 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 分子代謝制御研究部上級研究員 (40621107)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | AldolaseB / HFI / グルコース代謝 / フルクトース代謝 / メタボリックシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
1.マウスへのフルクトース負荷に対する肝臓の解析 先行研究より本研究部で作製した全身性のAldoBKOマウスにフルクトースを腹腔内投与した場合、急性の血糖低下がっ確認できている。本症状はヒトAldolaseB欠損症と同じであった。そこで、このフルクトース依存的な血糖低下へのAldolaseBの酵素活性が必要であるかを確認するため、アデノウイルスで野生型および酵素活性欠失型のアルドラーゼを肝臓に発現させ、フルクトース負荷試験を行った結果、血糖低下効果にAldolaseBの酵素活性が重要だ得ることが明らかになった。これまでに、AldoB欠損によるフルクトース負荷による血糖低下は上流のKHK阻害により改善することが報告されており、我々の結果と照らし合わせると、フルクトース代謝産物のフルクトース1リン酸の代謝不全が本症状の原因と考えられた。同時に野生型、AldoBノックアウトマウスにフルクトース負荷した時の肝臓のメタボローム解析を行った結果、実際にフルクトース1リン酸の劇的な増加がみられた。同時に複数の核酸代謝産物の増加や、多くのアミノ酸の増加を確認した。現在これらの意義について検討している。 2.初代培養肝細胞を用いたフルクトース不耐症の解析 先行研究で、パーコール濃度を改良することでAldoBKOマウスの肝臓から初代培養肝細胞の採取方法を確立した。そこで、野生型、AldoBKO初代培養肝細胞にフルクトース刺激をして、細胞内の変化を検討したところ、AldoBKOでは特異的にAMPKの活性化がみられた。この時細胞内のATP濃度を測定すると野生型と比べ顕著な減少がみられた。そこでAMPKの阻害剤を用いて糖新生への効果を検討したところ、AMPK阻害ではフルクトース依存的な糖新生の阻害は抑制されなかった。現在フルクトース1リン酸の標的の探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、HFIのモデルマウスを確立するとともに、アデノウイルスによる入れ戻し実験により本病態がAldolaseBの酵素活性に依存していることを明らかにした。また、そのことと一致して、メタボローム解析に結果よりAldoB欠損によってフルクトース1リン酸の顕著な肝蓄積とともに、多数の核酸代謝産物の減少、多数のアミノ酸の蓄積に加え、複数の糖代謝産物の変化を確認している。また、フルクトース不耐症の血糖低下の原因として、肝臓での糖新生が考えられるが、それを説明するカギとなる糖代謝産物の変化が見受けられた。通常多くの食物にはグルコースとフルクトースを含むスクロースが多く含まれることから、この2つの糖の代謝がカップルして行われることが必要である傍証と考えられる。興味深いことに、マイクロアレイ解析によりAldoBKOマウスの絶食時の肝臓では摂食時に亢進する複数の遺伝子の発現亢進が確認されており、フルクトース代謝経路がないことで、摂食/絶食のメタボリックスイッチにも異常がみられることを見出している。さらに、分子生物学的に解析するため、我々は通常の初代培養肝細胞採取法では困難であったAldoBKOマウスからの初代培養肝細胞の採取方法を確立した。それによって得られた初代培養肝細胞でも肝臓同様、フルクトース負荷によって糖新生の抑制、細胞内ATPの低下、AMPKが活性化すること等を明らかにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかとしたことには、AldoBKOマウスではフルクトース1リン酸の代謝不全により肝細胞内に蓄積するフルクトース1リン酸が何らかの酵素に作用することが機能障害につながることで、血糖低下が起こることが示唆された。肝臓においては糖新生が血糖上昇に寄与するため、初代培養肝細胞で肝糖新生に与えるフルクトースの効果を検討したところ、野生型ではフルクトース自身が代謝の結果グルコースの基質となる一方で、AldoBKOマウスの初代培養肝細胞では乳酸、グリセロールなどの他の基質とした場合においてもフルクトース添加により糖新生が強く抑制されたことから、フルクトース1リン酸がこの糖新生過程のいずれかの酵素に対して阻害活性を示すことが考えられた。そこで、糖新生系酵素に対するフルクトース1リン酸の結合や酵素反応に対する効果をin vitroの生化学解析により明らかにしていく。また、現在全身性のAldoBKOに加え、コンディショナルにKOすることができるAldoB flox/floxマウスの作製に取り掛かっており、ヘテロマウスまで確認できているフルクトース過剰負荷はメタボリックシンドローム発症と相関することから、AldoBの時期特異的、組織特異的KOにより検討する予定である。
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