2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the regulatory mechanisms by novel bioactive peptide and receptor systems
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21K08543
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
森 健二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00416223)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生理活性ペプチド / ペプチドホルモン / 神経ペプチド / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペプチドホルモンや神経ペプチドに代表される生理活性ペプチドは、細胞間の情報伝達を担う主要な分子の1つであり、内分泌的調節だけでなく摂食、飲水、性行動及び睡眠覚醒などの本能行動や、生体の恒常性を維持するための自律機能を調節するなど、生体の制御及び恒常性維持において重要な役割を果たしている。このため、未だ知られていない生体制御機構を明らかにするために、新しい生理活性ペプチドの探索や発見できた生理活性ペプチドの機能解析研究が現在でも盛んに実施されている。 これまでに、リガンドが不明なオーファンGPCRをCHO細胞やHEK293細胞で発現させて、そのアゴニスト活性を組織抽出物から見出すことにより、新たな生理活性ペプチドを同定した。その過程において、ラット心房から抽出したペプチド画分にHEK293細胞でのcAMP産生を誘導する活性が含まれることを見出している。このcAMP産生誘導活性のゲルろ過クロマトグラフィーにおける分子量や陽イオン交換クロマトグラフィーにおける保持時間を検討したところ、既知の生理活性ペプチドとは異なる物性を持つことが明らかになり、未知の生理活性ペプチドの存在が示唆された。そこで、高速液体クロマトグラフィーを駆使した複数回の精製によりこの活性を有するペプチドを単一に精製した。 また、これまでに新しい生理活性ペプチドとしてNMU precursor-related peptide(NURP)を同定し、興味深い生物活性を有することを示してきた。このNURPについて、新たな機能の探索と受容体を含めた作用機序の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット心房から抽出したペプチド画分にHEK293細胞でのcAMP産生を強力に誘導する活性が含まれることを見出した。そこで、この活性がどのような生理活性ペプチドに起因するかを検討した。このcAMP産生誘導活性は、ゲル濾過クロマトグラフィーにて分子量約3,500~4,000付近に溶出されるため、HEK293細胞でcAMP産生を誘導できるCGRP、VIP、PHI、PACAP27に起因すると考えられた。しかしながら、陽イオン交換クロマトグラフィーにおける保持時間を比較したところ、ラット心房の活性はCGRPより遅く、VIPより早く溶出されており、候補とした既知の生理活性ペプチドとは異なる保持時間を持つことが明らかになった。これは、着目しているcAMP産生誘導活性を持つペプチドのアミノ酸配列が、既知の生理活性ペプチドのそれらと異なることを示しており、未知の生理活性ペプチドが存在することを示唆していた。そこで、ラット心房からこの活性の単離を試みたが、複数回の高速液体クロマトグラフィーによる精製を実施しても夾雑物の混入により単一に精製することが困難であった。そこで、ラット心室にも同じcAMP産生誘導活性が含まれていたことから精製を実施した結果、140gのラット心室から約2ピコモルのペプチドを単一に精製できた。NURPについては、受容体発現細胞や新たな機能を検索するために、様々な培養細胞への本ペプチドの反応性を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット心室から単一に精製したcAMP産生誘導活性をもつペプチドの構造をプロテインシーケンサーと質量分析計を駆使して決定する。その後、明らかにしたペプチドの構造に基づき、RACE法にて各種動物でcDNAをクローニングし、ペプチドの前駆体構造を決定する。また、同定したペプチドの体内分布を知ることがその機能解明の端緒となるため、ペプチドの体内分布、組織発現量を核酸及びペプチド・レベルで解析する。これらの結果を基に、in situハイブリダイゼーション法と免疫組織化学染色を用いて、ペプチドの発現・産生細胞を特定する。一方で、このcAMP産生誘導活性が既知の生理活性ペプチドに由来する可能性も考えられるが、その場合でも心臓での存在が報告されていない可能性が高いため、そこでの生理的意義を検討する。また、多様な活性検出系も既に構築済みであるため、これに代わる新規生理活性ペプチドの探索も実施できる。NURPについては、受容体発現細胞や新たな機能を検索するために、本ペプチドの様々な培養細胞への反応性の検討を継続する。
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Causes of Carryover |
次年度に使用する予定の研究費は、主に物品費として計画していたが使用しなかったものである。物品費については必要最小限の消耗品の購入に充てたため、次年度使用額が生じた。翌年度は物品費として使用する予定である。 本研究計画では、国立循環器病研究センターの保有する機器を中心に使用するため、研究を遂行するための物品費(消耗品)を中心として研究費の使用を計画している。また、最新の知識・情報を収集するための調査・研究旅費、ならびに成果発表に関する必要経費の使用も計画している。
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