2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性低酸素環境に注目した乳がんの抗アンドロゲン薬抵抗性獲得機序の解明
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21K08545
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
今道 力敬 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (00570194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 恒 旭川医科大学, 医学部, 教授 (10451923)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低酸素環境 / スフェロイド / 抗アンドロゲン薬抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに、短期間および長期間の低酸素曝露における低酸素誘導因子(HIF)の転写活性の変動を評価するために、低酸素応答配列(HRE)を導入したレポーターベクターを用いたルシフェラーゼレポーターアッセイ系を構築した。このアッセイ系により、塩化コバルト(CoCl2)溶液添加による疑似的な低酸素環境下だけでなく、実際の低酸素(1%酸素濃度)環境下でのHIF転写活性を検出することが可能になった。次に、アンドロゲン受容体(AR)陽性乳がんの微小環境を模するため、ARを高発現しており、加えてアンドロゲン依存的な増殖能をもつ乳がん細胞株 MDA-MB453を用いて、細胞凝集により形成される3次元的な多細胞モデルであるスフェロイドの作成を試みた。MDA-MB453を低接着性の96ウェルプレートを用いて長期培養することにより、スフェロイド様の細胞集塊を作成することができた。続いて、乳がんスフェロイドの中心部に形成される低酸素環境の可視化のための細胞系構築を試みた。この細胞系ではCre-loxP システムを用いており、低酸素曝露により分解が抑制され安定化したHIFタンパク質がHRE下流のCreの発現を促進する。同時に細胞へloxP-DsRed-loxP-eGFP を導入することで、Creにより低酸素曝露された細胞が不可逆的にeGFP標識し、スフェロイド中心部の低酸素環境にある細胞を検出可能と考えられる。そのため、293T細胞およびレンチウイルスベクターを用いてloxP-DsRed-loxP-eGFPおよびHRE-CREを発現するレンチウイルスを作成した。各々のウイルスをMDA-MB453に感染させ目的のクローンを選択中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ARを高発現する乳がん細胞株 MDA-MB453由来のスフェロイド様の細胞集塊を確認できたことやHIF転写活性の検出系および組み換えレンチウイルス発現系を確立できたことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
loxP-DsRed-loxP-eGFPおよびHRE-CREを安定発現するMDA-MB453細胞を用いてスフェロイドを作成する。スフェロイド内部に存在する慢性低酸素状態に適応した細胞集団とスフェロイド外部層に存在する通常酸素状態にある細胞群を分離する。低酸素環境にある細胞は、HIFが活性化され不可逆的にeGFP を発現するので、トリプシン処理等により細胞を分散後も低酸素曝露された細胞として単離可能と考えられる。そこで、スフェロイド内部の低酸素領域の eGFP タンパク質発現を確認後、細胞を分散させ、eGFP 蛍光を指標として通常酸素細胞群と低酸素細胞群を分離する。分離した各細胞群の遺伝子発現を網羅的に解析し、AR陽性乳がんスフェロイドの通常酸素領域と低酸素領域に存在する細胞群の遺伝子発現特性を明らかにする。さらに、MDA-MB453を抗アンドロゲン薬エンザルタミド存在下で長期間培養・継代することで、エンザルタミドに抵抗性を示す細胞を選別する。乳がんスフェロイド内の低酸素細胞群に特徴的に発現する遺伝子群とエンザルタミド抵抗性乳がん細胞に発現する遺伝子群とを比較し、低酸素環境と抗アンドロゲン抵抗性獲得との連関を明らかにする。
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