2022 Fiscal Year Research-status Report
血管リモデリングが誘導する脂肪幹細胞制御因子の同定による新規肥満病態改善法の創出
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21K08549
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
和田 努 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 講師 (00419334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹岡 利安 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (00272906)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂肪幹細胞 / 肥満 / 脂肪組織血管 / ペリサイト / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満に伴う脂肪組織の肥大化には、個々の脂肪細胞の分化促進による肥大化、ならびに脂肪幹細胞(APC)の増殖が重要である。マウスにおいて内臓脂肪のAPCは高脂肪食負荷開始以降、1週間程度のごく短期間だけ増殖するとされてきた。しかし、我々は肥満過程において、内臓脂肪のAPCの数は高脂肪食負荷8週以降に増加することを見出した。 そこで、このAPCの増加が、APCの増殖によるものか、それともAPCから脂肪細胞への分化に伴うものかを検討した。雄性マウスにおいて高脂肪食負荷0週から1週間、および7週から8週間の期間を限定し、増殖により細胞核に取り込まれる試薬を指標にAPCの増殖を評価した。その結果、高脂肪食負荷開始1週間のAPCの増殖は既報の通り顕著に増加した。さらに7-8週目においてもAPCの増殖が認められたことから、肥満の進展期にもAPCが増殖することで脂肪細胞新生が生じることが示唆された。 我々は、肥満に伴い内臓脂肪組織に浸潤する炎症性マクロファージがPDGF-Bを産生し、これらが血管内皮に接着するペリサイトを脂肪血管から脱離させることで、脂肪組織の血管新生が促進することを報告してきた。高脂肪食負荷8週は、ちょうど脂肪組織内の血管からペリサイトが脱離する時期であり、またAPCが増加するタイミングとも一致する。そこで、高脂肪食負荷を行ってもペリサイトが脱離しないPDGFRb欠損マウスに経時的な高脂肪食負荷を行い、内臓脂肪におけるAPC数を検討した結果、本マウスでは高脂肪食負荷8週以降認められるAPCの増加を認めず、またこの時のAPCの増殖活性もコントロールマウスと比較し有意に低下していた。 以上の結果から、肥満の進行期において内臓脂肪組織では、ペリサイト脱離による脂肪血管リモデリングを契機としてAPCの増殖が促進されると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの報告と異なり、肥満の進展期においても内臓脂肪組織ではAPCが増殖し、その数が増加することで脂肪組織肥大化に寄与すると考えられた。KOマウスの成績から、肥満進展期のAPC増殖は脂肪血管ペリサイトに対するPDGF作用が媒介する血管リモデリングに伴うと示唆されたことから、その分子機構を検討するための条件が整ったと考えられるため、次年度の解析が潤滑に進むと予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
肥満に伴いAPCの分化と増殖がどのように制御されるのかをin vivo, in vitroの解析により明らかにする予定である。肥満に伴う脂肪血管からのペリサイト脱離の誘導機構につき、PDGF以外の因子を探索する。またPDGFや新たに同定された因子がAPCの増殖におよぼす影響とそのメカニズムにつき、ペリサイト分泌物の解析および内臓脂肪組織からペリサイトと内皮細胞を単離して解析することで、肥満進展期における脂肪細胞数増加が脂肪組織肥大化におよぼす分子機構を同定する。 これらの研究成果により、脂肪組織肥大化における脂肪新生の重要性を明らかとし、本パラダイムの分子機構の解明に基づいた新たな肥満進展抑制の開発を目指す。
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Research Products
(3 results)