2021 Fiscal Year Research-status Report
膵島内環境における細胞代謝変化と自己免疫性糖尿病進展の関連性の検討
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21K08558
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
二里 哲朗 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 研究協力員 (10782550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿比留 教生 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (00380981)
赤澤 諭 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (50549409)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 1型糖尿病 / NODマウス / IRF4 / 膵島自己抗原 / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、抗原特異的CD4+T細胞および自然免疫系細胞におけるIRF4発現の、NODマウスの自己免疫性糖尿病病態に果たす役割を明らかにするため、以下の研究を行った。 1)抗原特異的CD4+T細胞上のIRF4発現による増殖能・機能発現の解析 野生型、 IRF4ヘテロ、IRF4ホモ欠損BDC2.5CD4+T細胞をRag1KO NODマウスへ養子移入し、糖尿病発症直後の膵島浸潤T細胞を分離し、解析を行った。その結果、野生型とヘテロ欠損で、膵島内でのT細胞増殖、活性化(CD49d+CD11a+分画比率の上昇)、IFN-γ+IL-17+CD4+T細胞分画細胞比率に有意差を認めた。糖尿病発症率にもIRF4用量依存性に有意差を認めたが、一方で、糖尿病発症直前での膵島炎スコアには有意差を認めなかった。このことから、IRF4発現は用量依存性に関与し、糖尿病進展を制御する可能性が示唆された。 2)自然免疫細胞上のIRF4発現による増殖能・機能発現の解析 BDC2.5CD4+Tを野生型、 IRF4ヘテロ、IRF4ホモ欠損Rag1KO NODマウスへ養子移入を行い、1)と同様に、膵島炎スコア解析と、その後の糖尿病経過を観察した。自然免疫細胞上のIRF4発現は主に膵島炎形成や糖尿病発症時期の遅延に関与したが、糖尿病の累積発症率には影響しなかった。以上より、NODマウスにおけるIRF4の糖尿病病態への役割として、自然免疫系細胞の活性化を介し膵島炎形成を促進する一方、抗原特異的CD4+T細胞においては、膵島局所での活性化、増殖・分化に強く影響することで、糖尿病進展を制御していると考えられた。IRF4発現調整による治療開発や発現モニタリングによる機能的T細胞診断など、今後の臨床応用の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
養子移入実験を用いた解析に関してはほぼ終了しており、現在、in vitroにおいても同様にT細胞機能解析を行っている。具体的には、IRF4欠損BDC2.5CD4+T細胞を、既知の膵島自己抗原ペプチド(RLGL-WE14)で抗原刺激後、CFSEラベルを用いた細胞増殖能や、IFN-γ、IL-17などのサイトカイン発現の比較検討を行っている。また、CD4+T細胞代謝を定量的に測定できるフラックスアナライザーを用いた実験系は、野生型マウスのみを用いた予備実験の段階であるが、順調に進行している。 現時点の問題点として、マウスの作出不良があり、特にBDC2.5TgIRF4KOマウスが少ない点がある。対策として、胚作製や飼育室の変更などを行い、改善に努めている。進捗データを追加して発表も定期的に行っており、研究は順調に進捗していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、喫緊の課題であるBDC2.5TgIRF4KOマウスの繁殖とそれを用いた前述のin vitroデータ解析(細胞増殖、サイトカインアッセイ、フラックスアナライザー)を優先して行っていく。特に、IRF4遺伝子発現量の違いにより、活性化T細胞の代謝が、解糖系・酸化的リン酸化いずれに傾くかが大変興味のあるテーマであり、補足データとなる、代謝に関連した責任候補分子の発現量解析まで行うことが目標である。
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