2022 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanism underlying secondary hyperparathyroidism in chronic kidney disease
Project/Area Number |
21K08561
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
片岡 浩介 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (20262074)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 副甲状腺 / 転写調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
PTH遺伝子発現のビタミンDおよびFGF23による抑制の分子機構の解明を目指した。昨年度までに、PTH遺伝子エンハンサー・プロモーターを含むレポーター活性を、副甲状腺特異的な転写活性化因子Gata3-MafB-Gcm2と、ビタミンD受容体VDR-RXRaを共発現させ、 ビタミンDの濃度依存的に抑制する実験系を構築していたので、これを利用して抑制の分子機構の解明を進めた。PTHプロモーター上には、VDR-RXRが結合して転写を抑制するnVDREが同定されているが、プロモーター・エンハンサーのさまざまな欠失変異体を作製して調べると、当該のnVDREは抑制には不要であることが判明した。一方で、MafB, Gcm2, Gata3の結合配列はいずれも必須であった。さらに、MafB, Gcm2, Gata3をWestern blotで検出したところ、これら3者が共存することによって、VDR-RXR-ビタミンD感受性が生じて減少することを見出した。この知見を手がかりに、ビタミンDによる抑制機構とSHPTでの破綻の実相を解明できるだろう。 一方でFGF23によるPTHの抑制の分子機構に関しては、確立した実験系の妥当性の評価に時間を要した。受容体FGFR1は、発現させるとある程度の活性化状態となってしまうので、共受容体であるaKlothoとリガンドFGF23に依存せずPTHレポーターをある程度抑制することが判明した。そこで別のレポーター系(Egr1遺伝子プロモーター活性)で活性をモニターしつつ、実験系の評価を行うことによって、FGFR1-aKlotho-FGF23の共存下で効率よくPTHレポーター活性が抑制されることを担保できる実験系が構築できたことを確認した。この系を利用し、FGFR1下流のどのシグナルがPTH転写抑制に必要とされるのかなどを明らかにすることに注力している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの進捗状況と得られた結果を受けて、PTHおよびaKlotho遺伝子の転写調節に絞って解析を進める予定であったが、本年度はaKlotho遺伝子に関してはほとんど着手できなかった。その一方で、PTH遺伝子の転写調節に関しては、ビタミンDおよびFGF23による抑制の分子機構の解明において進捗を見た。ビタミンDに関しては、転写活性化因子としてこれまでに同定してきたMafB-Gcm2-Gata3の3者が共存してはじめてビタミンD感受性が生まれ、ビタミンD-VDR-RXR依存的にその発現量が低下する、という意外な知見に辿り着くことができた。転写抑制の分子機構の詳しい解明は、最終目標であるSHPTでの破綻の分子機構を理解するために必須であり、当該の発見は、研究が正しい方向に進んでいる感触につながっている。FGF23によるPTHの転写抑制に関しては、当初はFGFR1の恒常活性化型変異体を利用して比較的単純にチロシン・キナーゼ活性に依存した転写抑制機構によるだろうと推定していた。しかしながら、慎重に解析を進める中で、FGF23-aKlotho-FGFR1の3者が共存したときに生じるシグナルはそれほど単純ではなさそうであることが、Egr1遺伝子レポーターと比較検討しながら解析を進める中で明らかになった。すなわち、間違った方向に研究を進めてしまう可能性があったが、軌道修正を行うことができた。未だ全体像の解明には至っていないが、以上の理由から、おおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
副甲状腺機能の抑制系の受容体であるKlotho, FGFR, VDR, CaSRなどの転写調節機構を調べることによって、SHPTにおけるこれらの受容体の発現抑制と脱抑制の しくみを明らかにすることを目的としてきたが、昨年度までの結果を受けて、解析対象を広げる(FGFR(1~4), VDR, CaSRを対象とする)のではなく、PTHとKlotho遺伝子を対象として深掘りする方向性に転換した。本年度はさらにPTH遺伝子に対象を絞り、ビタミンDとFGF23による抑制の分子機構について知見を得ることができた。特にビタミンDによる抑制に関して、転写を活性化する側の因子であるMafB-Gcm2-Gata3(互いに物理的・機能的に相互作用することをすでに報告している)が、揃って共存するときに限って、ビタミンDによる抑制を受ける(タンパク質レベルで減少する:おそらく分解が促進される)ことを発見したことは、今後の進展にとって重要なポイントと思われる。そのメカニズムの解明は一筋縄ではいかない感触を得ているが、この点は非常に重要と考えられるので、重点的に解明してゆく。また、FGF23によるPTH遺伝子発現の抑制に関しても、信頼できる評価系を構築できた確信が得られたので、これを利用して解析を進めることで進展が見込めると考えている。一方、当初から予定していたカルシウム感知受容体CaSRを介したカルシウムシグナルによる抑制機構は、本年度も未着手のままである。FGF23による抑制機構と重複する仕組みである可能性もあるので、併せて解析を進め ることにする。
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