2021 Fiscal Year Research-status Report
プロオピオメラノコルチン遺伝子の転写抑制メカニズムの解明
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21K08568
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
高安 忍 弘前大学, 医学研究科, 講師 (80466507)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロオピオメラノコルチン / 転写調節 / グルココルチコイド / ACTH |
Outline of Annual Research Achievements |
ACTH前駆体であるプロオピオメラノコルチン(POMC)遺伝子発現を制御する新たなゲノム領域を同定し、POMC遺伝子のグルココルチコイド(GC)によるネガティブフィードバックのメカニズムの一端を解明することを目的としている。未知のエンハンサー領域を決定するため、活性化エンハンサー/プロモーターのマーカーと考えられているMediator complexのクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-seq)のdataから、マウスACTH産生下垂体腫瘍細胞株AtT-20細胞のエンハンサー/プロモーター領域を推定し、Cap analysis of gene expression (CAGE)で得られたエンハンサー候補(双方向性の転写物のある領域)と比較した。驚くべきことに、CAGEから得られたエンハンサー候補とMediator complexから推定されたエンハンサー領域に共通する部分は非常に少なかった。特に、GCで強く変化するMediator complexの誘導領域や発現が増強するCAGE領域についてはまったくオーバーラップしていなかった。この結果からは、GCによってPOMC遺伝子発現を調節については、Mediator complexの誘導に依存する部分、しない部分があるものと推定された。よって、次にこれらの領域が、既知のPOMCのプロモーターと、さらにはPOMCの転写開始点から7 kb上流のエンハンサー領域と物理的に相互作用しているかどうかについて、遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法を用いた解析に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、Mediator complexのChIP-seqとCAGEから得られた領域はオーバーラップすることを予想していたが、概要に示した通り、ほとんど重複していなかった。Mediator complexの誘導がみられた領域は多数ある一方で、CAGEではPOMC遺伝子が存在するchromosome上に疑わしい領域が認められなかった。よって、当初初年度に予定していた、POMC遺伝子付近のエンハンサー候補のknock down実験にかわり、GCに依存してPOMC遺伝子転写を制御する領域を絞り込む目的で、2年目に予定していた遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法に引き続き、網羅的核酸シークエンス解析を行うことでPOMCプロモーター、あるいは-7 kb エンハンサーとのDNAループを形成する領域を同定する。GC添加でも同様の検討を行い、定常状態と比較してゲノム高次構造が変化した領域を検索する。Mediator complexのChIP-seq、CAGEから得られたエンハンサー候補配列と比較し、共通部分を抽出することでGCによるPOMC転写抑制に関与する新規DNA配列を推定する。この配列を、強発現実験、あるいはknock down/out実験に落とし込み、POMC遺伝子発現の変化や培養上清中のACTH分泌の変化をみることで、実際にPOMC遺伝子転写に関与している領域であることを証明する。
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Causes of Carryover |
当初予測していた結果と異なったため、研究計画(順序)を変更した。次年度に行う遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法と網羅的遺伝子シーケンス解析を先行させ、POMC遺伝子転写調節ゲノム領域の絞り込みを行ってから、初年度に予定していた強発現、knock down/out実験に移行することとした。
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