2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of glucose excretion mechanism of metformin in human colon
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21K08578
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
坂口 一彦 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (20444573)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メトホルミン / FDG/PET / グルコース / 消化管 / GLUT2 |
Outline of Annual Research Achievements |
メトホルミンは世界で最も広く使用される糖尿病治療薬であり、臨床で使用され始めて 60 年以上が経過する薬剤であるが、その作用機構には不明な点が多い。一方、メトホルミン服用者では、FDG-PET/CT 検査時に非代謝性グルコースである FDGが腸管へ 集積することが知られており、本剤が腸管グルコース代謝に影響を及ぼす証拠の一つと考えられている。しかし高度な空間・物質解像度を持つイメージング法である PET/MRI を用いた解析はなされていなかった。 そこで我々は当院で実施されたFDG-PET/MRIの既存データの後方視的解析を実施し、メトホルミンが消化管内腔にブドウ糖を排泄するという過去に報告の無かった作用を有し(Diabetes Care 2020;43: 1796-1802)、その効果は服用するメトホルミンの用量に依存する(Diabetes Obes Metab 2021; 23: 692-699)ということを明らかにした。しかしながらメトホルミンの消化管内腔へのブドウ糖排泄増強効果がどのようなメカニズムで、回腸以遠の消化管のどの部位に生じるのかは未だ明らかではない。 囓歯類にメトホルミンを服用させると、小腸の粘膜側にGLUT2の発現が増えると報告されており、GLUT2は双方向性のブドウ糖糖輸送担体であることから、ヒトにおいてメトホルミンの消化管内腔へのブドウ糖排泄効果に関わる可能性を考えて、大腸内視鏡検査で得た大腸粘膜、回腸粘膜の生検組織の免疫組織染色でGLUT2の粘膜側への発現を検討することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
免疫染色での検討にあたり、抗体が作動するかどうかを検討するために、癌切除などで得られた消化管の健常部分を用いて、神戸大学医学部病理学教室の協力の下、抗GLUT2抗体を用いた染色を試みた。特に肥満者においても小腸粘膜においてGLUT2の発現が増えるとされていることから、肥満者の標本を対象とした。しかしながら、抗体の種類、染色の手順などを変えても評価可能な染色を得ることができなかった。ホルマリン固定されたサンプルを用いることに問題がある可能性を考えて、メトホルミンを1日1500mg服用中の患者に対して新規に大腸内視鏡検査を行い、生検で得た回腸末端の生検組織より凍結標本を作成し、免疫染色、蛍光染色を試みたが、やはり評価可能な染色を得ることができなかった。 そこでメトホルミンによるグルコース排泄の増強効果のメカニズムの検討方法として、免疫染色法による検討は一旦保留として、以下の方法でFDG/PETのイメージ解析でFDGの排泄部位を検討することに切り替えた。 具体的にはメトホルミン服用2型糖尿病患者を対象に、FDG-PET/MRIを90分間連続的に撮像し、得られた画像から動画を作成し視覚的に動態を評価するとともに、消化管の各部位(空腸、回腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、直腸)において得られた放射強度の時系列データを数理モデルを用いて解析することとした。もっとも関心があることは大腸粘膜においてもFDGの排泄があるのか、大腸に集積するFDGは小腸からの流入によるものであり、粘膜から消化管内腔への排泄は小腸のみでおきるのかどうかであるため、その判別に役立つモデルを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
メトホルミン服用2型糖尿病患者1名におけるFDG/PET連続撮像で得られた画像解析から、FDG投与直後から小腸に集積が認められた。空腸では時間経過とともに漸減するのに対して、回腸以遠では漸増していくことが視覚的に捉えることが出来た。また、蠕動に伴う動きとして、消化管内腔をFDGが移動することも視覚的に明らかになった。 血管、消化管各部位をそれぞれコンパートメントとして、上部のコンパートメントから下部のコンパートメントに移動するフローと、血管から各コンパートメントに流入するフローを設定した。血管からの流入は小腸だけにおいて生じるとするモデルと、小腸と大腸と両方で生じるとするモデルを作成し、実測値との当てはまりの良さを検討することとした。 FDG/PET連続撮像を残り4名に実施し、その動態を視覚的に評価することと、数理モデル解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
メトホルミンによる消化管へのブドウ糖排泄促進作用のメカニズムを解明するために、消化管粘膜(回腸、大腸)の免疫染色での糖輸送担体の発現の検討を計画していたが、コントロールサンプルでの免疫染色が成功せず、多数例での検討については、現在中断しているため、予定の使用額には至らなかった。現在、メカニズム解明の手段を別に検討している。その一つがFDG-PET連続撮影画像を解析することで、排泄部位を同定することである。分子レベルで野解析は動物実験も計画する予定である。
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Research Products
(4 results)