2021 Fiscal Year Research-status Report
NAFLDおよび耐糖能異常における肝血管内皮細胞由来分枝アミノ酸の意義
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21K08585
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
宮崎 章 昭和大学, 医学部, 教授 (70253721)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 分枝鎖アミノ酸 / カルパイン |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の進展は肝硬変や肝がんなどの致命的な病変の原因になると考えられる。バリン、ロイシン、イソロイシンからなる分枝鎖アミノ酸(BCAA)は糖尿病や虚血性心疾患を増悪させるとの報告もみられるが、NAFLDにおけるBCAAの役割は明らかでない。これまでに我々は、生活習慣病におけるストレス応答性細胞内プロテアーゼファミリーであるカルパインの役割を検討してきた。本研究では、肝血管内皮細胞のカルパインが肝臓局所のアミノ酸産生を制御し、NAFLDの増悪を促進しているのではないかという仮説を検証した。 ヒト臍帯静脈血管内皮細胞を高グルコース下に培養したところ、カルパインが活性化され、これにより細胞外にアミノ酸が遊離することを認めた。細胞タンパク質を解析したところ、150 kDaを超える高分子量のタンパク質発現が低下した。肝細胞において、細胞内アミノ酸レベルはmTORC1という分子によって検知されS6Kをリン酸化することで脂肪新生が促進される。血管内皮細胞をアミノ酸不含培地で培養し、カルシウムイオノフォアでアミノ酸を遊離させて条件培地とした。条件培地を肝細胞株HepG2細胞に負荷してインスリンで刺激したところ、SK6のリン酸化を認めた。一方、アミノ酸を含まない培地ではSK6のリン酸化を認めなかった。条件培地を負荷したHepG2細胞にオレイン酸を添加したところ脂肪滴が形成された。mTORC1阻害剤であるラパマイシンやアミノ酸トランスポーターLAT1阻害剤であるJPH203は、HepG2細胞におけるSK6のリン酸化や脂肪滴形成を顕著に抑制した。従って条件培地に含まれるアミノ酸がmTORC1を介してHepG2細胞における脂肪新生を促進することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養血管内皮細胞と肝細胞株HepG2細胞を用いて、高グルコース下に培養した血管内皮細胞由来のアミノ酸がHepG2細胞における脂肪滴の形成を促進することを明らかにした。本研究を着手するにあたり設定した我々の作業仮説は概ね妥当であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞で得られた上記の知見の妥当性をモデルマウスを用いて個体レベルで検討する。血管内皮細胞のカルパインが欠損した遺伝子改変マウスを用いて、血管内皮細胞由来のアミノ酸の遊離や肝細胞における脂肪滴形成におけるカルパインの役割を明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)