2021 Fiscal Year Research-status Report
NCYMによる分裂期制御機構とその神経芽腫発がんへの寄与の解明
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21K08610
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
末永 雄介 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (80581793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 清宏 地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 副部長 (10455389)
筆宝 義隆 千葉県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 部長 (30359632)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / MYCN / Myc-nick / NCYM / SNP / VUVCD |
Outline of Annual Research Achievements |
神経芽腫は小児固形腫瘍であり、がん遺伝子MYCNが増幅し過剰発現する。MYCN増幅を伴う神経芽腫は高頻度で再発・遠隔転移を起こし、その長期生存率は50%程度である。MYCNを交感神経節に特異的に過剰発現するMYCN Tgマウスは神経芽腫を自然発症するが、遠隔転移は稀でありヒトの病態を反映しない。研究代表者らはNCYMがヒトでのみタンパク質をコードすることを示し、このNCYMタンパク質がGSK3bの抑制を介してMYCNを安定化することを発見した(Suenaga et al., PLoS Genet. 2014)。またMYCN/NCYM Tgマウスを作製し、転移能や薬剤耐性を示す神経芽腫を発症することを示した。NCYMによる神経芽腫の悪性化は分裂期における細胞死を抑制によることが示唆されたが、その詳細な分子機構は明らかになっていない。本研究ではNCYMがどのような分子機構により神経芽腫の細胞死を制御するのかを明らかにする。 本年度はNCYMの構造科学的な解析に取り組み、シンクロトロンによる放射光を用いた真空紫外円二色性解析(VUVCD)により初めてその二次構造を明らかにした(Matsuo et al., Frontiers in Oncology)。NCYMの二次構造は中央に集積しドメインを形成していた。また、この中央ドメイン構造には非同義置換変異を伴う一塩基多型(SNP)が複数存在し、これらSNPは東アジア人、特に日本人に得意的に集積していた。そのSNPの一つN52S変異を持つNCYMを神経芽腫細胞に過剰発現させると、NCYMによるMyc-nick産生が増加した。NCYMは分裂期においてMyc-nickを産生し細胞死を抑制するため、NCYMのN52は分裂期における細胞死抑制に重要な働きを持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
NCYMによる分裂期における細胞死抑制に重要なアミノ酸を特定し、その結果を論文発表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はこれまでにMYCN/NCYMゲノム領域における多くの転写因子結合サイトを同定してきた。CRISPR-dCAS9法により転写因子の結合を阻害したところ、OCT4の結合を阻害することでMYCN/NCYM増幅神経芽腫の細胞死が誘導されることが明らかになった。そこで、今後はOCT4結合を阻害するCRISPR-dCAS9をMYCN/NCYM増幅神経芽腫(CHP134およびIMR32)に導入し、細胞からRNAを抽出してRNA-seqにより発現変動する細胞内経路を同定する。また、最近我々は、遺伝子進化と種の進化を結びつける新たな指標としてORFドミナンスを提唱し、MYCN/NCYMがORFドミナンスを上昇させることでヒトにおけるnoncoding RNAからの新規coding RNAの出現に関与する可能性を示唆した(Suenaga et al., EMBO Rep. 2022)。上記のRNA-seqデータを用いてORFドミナンスの変動とその細胞死誘導との関連についても併せて解析する。
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Causes of Carryover |
分担研究者による生化学的実験において、既存の抗体で実験が可能であったため未使用額が発生した。今年度の成果をもとに来年度は異なるタンパク質の抗体を購入する予定なので、その費用とする。
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Research Products
(9 results)