2021 Fiscal Year Research-status Report
乳がんのネオアンチゲンにおけるHLA Class II拘束性ペプチドの網羅的探索
Project/Area Number |
21K08614
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂東 裕子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00400680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮寺 浩子 筑波大学, 医学医療系, 助教 (40361464)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳癌 / public neoantigen / HLA class II拘束性ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、乳癌のpublic neoantigenからHLA class IIに提示されうるペプチド配列を見出すことである。 近年、乳癌領域においてがん免疫療法は第4の治療法として期待されている。腫瘍組織の変異アミノ酸配列を含むペプチドはHLA class Iに提示されると、患者特異的腫瘍抗原(neoantigen)として自己の免疫機構の攻撃対象となりうる。腫瘍退縮効果のあるペプチドワクチンを開発するためには、CD8陽性細胞障害性T細胞の活性化と強調して、HLA class IIを介したCD4陽性1型ヘルパーT細胞を活性化しうるneoantigenを同定することが重要である。がん遺伝子パネル検査が保険適応となり、患者間共通のpublic neoantigenの中からT細胞に認識されるHLA class II拘束性ペプチドが同定されれば、汎用性の高い治療ターゲットとなりうる。これまでにHLA II拘束性ペプチドを計算機上で予測するアルゴリズムの開発が行われているが、予測精度が低いことが長年の課題であった。本研究では、HLA class II-ペプチド複合体の安定性を細胞表面発現量で評価する新規測定系を用いて、HLA class IIが提示しうる乳癌のpublic neoantigenを探索する。本手法は既存手法(合成ペプチドを用いたIC50測定)よりも定量性が高い。そのため、既存手法と結合予測アルゴリズムでは見逃されていたワクチン候補となるT細胞エピトープを高精度かつ効率的に同定するために有効である可能性がある。 令和3年度は、ワクチン候補となりうる変異ペプチドを選出するために、乳癌のpublic neoantigenから設計した変異ペプチドとHLA class IIとの結合性を新規測定系を用いて探索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床応用されているがん遺伝子パネル検査であるFoundationOneCDx, FoundationOne LiquidCDx(Foundation Medicine, Inc.), NCC oncopanell (Agilent)に登録されている遺伝子を中心に、COSMIC (Catalogue of Somatic Mutations in Cancer)のデータベースを用いて候補領域を検索した。 乳癌で頻度の高い体細胞遺伝子変異(合計2遺伝子、18変異)を選択し、計算機上でHLA-ペプチド結合予測を行い(NetMHCIIpan4.0)、日本人に多いHLA class IIアレルに提示可能なペプチドを検索した。日本人集団でアレル頻度が高いDRB1, 3, 4, 5を解析対象とした。 そして、これらの変異を持つペプチドとHLA class IIとの相互作用を、研究分担者らが開発した測定系を用いて測定した。その結果、HLA class IIに比較的強く結合しうる変異ペプチドを合計12種類認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
HLA-DRとの結合が示唆された領域に関しては、野生型配列との結合性評価を行う。 野生型・変異型間で結合能の違いが大きいものに関しては、結合に関わるアンカー残基を推定する。野生型・変異型間とも同等に結合能が強い領域については、HLA-ペプチド複合体での変異部位の位置を推測する。野生型・変異型間での結合性の違いが認められワクチン候補となる可能性がある領域については、抗原提示細胞、ペプチド、健常人末梢血由来T細胞の共培養およびT細胞アッセイ(ELISPOT)を行いT細胞による認識の有無(免疫原性)を確認する。 このための実験条件検討を令和4年度に開始する。これまでに解析したDRアリルにおいて結合が認められなかった変異領域に関しては、他のHLA class IIアレルとの結合評価を行う。
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