2021 Fiscal Year Research-status Report
Role of trogositosis in tumor immune escape
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21K08649
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
齋藤 心 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60382909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 丈二 自治医科大学, 医学部, 教授 (20251308)
山口 博紀 自治医科大学, 医学部, 教授 (20376445)
佐田友 藍 自治医科大学, 医学部, 助教 (40528585)
相澤 健一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70436484)
宮戸 秀世 自治医科大学, 医学部, 講師 (90813163)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トロゴサイトーシス / がん転移 / 免疫逃避 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内で癌細胞が血液細胞と接触する際に癌細胞が血液細胞の細胞膜の一部をかじりとることにより、血液細胞から癌細胞への膜分子の移行(トロゴサイトーシス)が起き、癌細胞が血液細胞の持つ性質を獲得、癌の進展に影響を与えるのではないかという仮説のもと実験を行った。まず、FicollとMACS(磁気分離法)を用いて血液細胞より分離したCD14陽性単球の細胞膜をPKH26にて染色し、GFP導入胃癌細胞(NUGC)と24時間の共培養をおこなった。FACSによる解析にて癌細胞の一部にPKH26の染色を認め、PKH26が癌細胞へ移行したと考えられた。また、単球の膜タンパクをビオチン標識した場合も、ビオチンが単球から癌細胞へと移行していた。これにより単球から癌細胞への膜分子の移行が起きることが確認された。続いて、免疫シナプスの形成に関与する分子(MHC classII, CD11b, CD11a, CXCR4, PD-L1など)に着目し、トロゴサイトーシスを起こす分子の探索を行った。最初、単球あるいは単球より分化させたマクロファージと癌細胞を共培養し、癌細胞にて発現の上昇する単球由来の膜分子を調査したが、有意な上昇を認めなかった。そこで、培養条件を検討し直し、癌細胞とPBMCの3時間の共培養を行った。すると、PBMCに特異的に発現するCD11aが癌細胞(NUGC, AZ521, OCUM)において発現上昇することが観察された。CD11bやCXCR4などの他の分子の発現上昇は認めなかった。さらに、時間経過を追ってCD11aを発現する癌細胞の割合の変化について調査すると1時間後から発現上昇し、4-8時間において発現のピークを認め、24時間経過すると発現の低下を認めた。また、フィルター膜を介して非接着状態で共培養を行うと癌細胞におけるCD11aの発現上昇を認めず、細胞間の接触が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初めにFicollとMACSを用いて血液細胞を顆粒球、単球、CD14陰性PBMC(主にT細胞)に分離し、それぞれをPKH67にて染色、共培養にて癌細胞(MiaPaca)へPKH67が移行する割合を調査した。単球においてPKH67の移行を最も多く認めたため、単球について調査することとし、移行する膜分子を同定するための網羅的解析を試みた。単球の細胞膜をあらかじめSulfo-NHS-SS-Biotinにて標識しておき、24時間癌細胞と共培養、FACS sortingにより癌細胞を分離しタンパク抽出液を作成した。この中にはBiotinが結合した膜分子で単球から癌細胞へ移行したものも含まれると考えられ、この膜分子をNutravidin結合アガロースゲルに結合させることにより分離。還元剤(50mM DTT)を用いて、Biotin内に存在するS-S結合を切断し、単球由来の膜分子の分離を行なった。電気泳動、銀染色にてタンパクの染色を行ったところ、分離されたタンパクのバンドの位置は癌細胞が本来もつタンパクのバンドの位置とほぼ一致しており、癌細胞由来のタンパクの混入が大きく、単球から癌細胞に移行した分子をうまく分離できていないと考えられた。このため、移行する可能性のある膜分子(MHC classII, CD11b, CD11a, CXCR4, PD-L1など)について、flowcytometerを用いて一つ一つ移行の有無を検証した。PKH67の移行が最も多く、トロゴサイトーシスが起きやすいと考えられる単球と24時間共培養しても、癌細胞における単球由来の分子の発現は検出されなかった。このため、PBMCと癌細胞を3時間共培養したところ、癌細胞におけるCD11aの発現の上昇を認めた。このように、血液細胞の種類、及び共培養の時間について検討し、候補となる分子を一つ一つ検証したため多くの時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、PBMCと共培養することによりCD11aの発現を認めるようになる癌細胞をFACSにてsortingし、癌細胞におけるCD11aの遺伝子発現をRT-PCRにて調査する。また、蛍光顕微鏡観察にて、癌細胞におけるCD11aの発現の有無を確認する。RT-PCRにて癌細胞におけるCD11aの遺伝子発現を認めず、蛍光顕微鏡にてCD11aの発現が癌細胞において観察される様であれば、トロゴサイトーシスによりPBMCから癌細胞にCD11aが移行したと考えられる。また、PBMCの中で癌細胞のCD11aの発現に関与する免疫細胞の同定を行う。CD14、CD16、CD19抗体を用いたMACSによりT細胞、単球、B細胞、NK細胞をPBMCより分離し、それぞれを癌細胞と共培養することにより、癌細胞のCD11aの発現上昇に関与する血液細胞を同定する。さらに、CD11aを発現するようになった癌細胞においてそのリガンドであるICAM-1への接着能が亢進するかについて、蛍光標識したrecombinant ICAM-1への癌細胞の結合、および血管内皮への癌細胞の接着に対する抗LFA抗体による抑制などの実験を行うことにより検証する。また、Sulfo-NHS-SS-BiotinによるPBMCの細胞膜の標識を行った上で、癌細胞と4-8時間の共培養、癌細胞をFACS sortingの後、癌細胞に移行したBiotin標識タンパクの分離、抽出を行いLC-MSを用いて、PBMCから癌細胞へ移行するCD11a以外の分子についても調査する。以上の研究は、癌の転移に関与する分子機構の解明、癌転移抑制の新たな治療法の開発につながると期待される。
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Causes of Carryover |
当初、学会出張費に150000円を充てる予定でいたが、コロナ禍のため学会がweb開催となり、2021年度は出張費が必要なくなった。このため、2022年度の学会の出張費に150000円を繰越すこととした。 また、当初トロゴサイトーシスにより血液細胞から癌細胞に移行するタンパクを抽出した後、LC-MSにて網羅的解析を行う予定であったが、Biotinを用いたタンパク分離がうまくゆかずに、2021年度はLC-MSを用いた解析を行うことができなかった。このため、2022年度に実験を条件を変えて再度タンパク抽出行い、LC-MS解析を行う予定としたため、予算を繰り越すこととした。
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