2021 Fiscal Year Research-status Report
複合組織移植における拒絶反応の網羅的解析―マウス顔面移植モデルを用いてー
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21K08654
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
中川 美和 (森田美和) 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 客員教授 (90329699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 慎士 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 客員教授 (10380429)
田中 芳彦 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (00398083)
鍛治屋 浩 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (80177378)
梨井 康 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 移植免疫研究室, 室長 (60321890)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複合組織移植 / 顔面移植 / 拒絶反応 / 免疫寛容 |
Outline of Annual Research Achievements |
四肢移植や顔面移植などの複合組織移植はその歴史がまだ浅いため、手術後の各組織における免疫反応の詳細が明らかでなく、免疫抑制剤による拒絶反応の管理も未だ手探りなのが現状である。また移植後の免疫抑制剤の使用に伴う副作用は患者のQOLに少なからず影響するため、移植組織に対する免疫反応のみを効果的に抑える方法が待ち望まれている。そこで本研究は複合組織移植後の基礎的免疫学知見及び免疫病理学的拒絶スコアの構築、さらにドナー(移植片)特異的免疫寛容誘導法の樹立を目的としている。 複合組織移植後の拒絶反応を詳細にかつ網羅的に解析するための実験モデル作製のため、初年度である2021年度は多様な遺伝子改変動物や免疫研究用試薬が入手可能であるマウスを用いた異所性半顔面移植手技の確立を試みた。手術は全て顕微鏡下にて行い、ドナーマウスの右側顔面部の血管、皮膚、粘膜、筋肉、軟骨、顎骨、切歯を全て含むひとつの移植片として摘出し、レシピエントマウスの鼠径部へ異所性に移植した。ドナー及びレシピエントに同系マウスを用いた同モデルにおいて、移植後100日以上生着した移植片を摘出し、microCTによる骨歯の形態学的画像解析ならびにHE染色による各組織における病理組織像を解析したところ、移植前とほぼ変化がなかったことから複合組織移植モデル手技は確立したものとした。 これまでにマウス顔面組織を用いた複合組織移植モデルは世界で数例報告されているが、本モデルのように多種にわたる組織を含む移植片を用いたモデルは世界で初めてであり、このマウスモデルを用いて得られた詳細な情報は今後の臨床における複合組織移植の診断基準、治療方針、予後の改善に大きく貢献すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度にはドナーとレシピエントに同系マウスを用いた複合組織移植モデル手技は確立できた。現在は移植後の複合組織移植片を構成する各組織における拒絶反応を解析するため、ドナー及びレシピエントに異系マウスの組み合わせを用いたアロ移植モデル作製を開始し、移植後経時的に移植片を摘出して病理組織学的解析を行なっている。 本研究の研究計画では2021-2022年度において複合組織移植のマウスモデルの確立とそれを用いた各組織における拒絶反応の網羅的解析、さらには同モデルに免疫抑制剤などを使用した場合の免疫反応の変化を確認する予定であり、進捗状況としてはほぼ順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
アロ異所性半顔面移植モデルを用いて、移植片を構成するそれぞれの組織における移植後の拒絶反応をマイクロCT、組織切片のHE染色並びに免疫組織染色により形態学的、病理組織学的変化及び浸潤免疫担当細胞の経時的解析を行う。 その結果をもとに、(1)本移植モデルに免疫抑制剤投与した場合の各組織における拒絶反応抑制効果、(2)本移植モデルに遺伝子改変マウスや抗体療法を使用した場合の拒絶応答を形態学的、組織病理学的、細胞学的解析を行い、それらの結果を総合的に判断して複合移植における基礎免疫病理学的理論及び免疫病理学的拒絶スコアの構築を図る。 さらにこれまでに確立されている骨髄キメラモデルやco-stimulatory inhibitorなどを使用したドナー(移植組織片)特異的免疫寛容誘導法を導入し、これまでに確立した病理組織学的拒絶スコアを検討し、その評価を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画より経費の使用が節約できたため。 次年度における物品費購入に使用する予定。
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