2022 Fiscal Year Research-status Report
複合組織移植における拒絶反応の網羅的解析―マウス顔面移植モデルを用いてー
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21K08654
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
中川 美和 (森田美和) 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 客員教授 (90329699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 慎士 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 客員教授 (10380429)
田中 芳彦 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (00398083)
鍛治屋 浩 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (80177378)
梨井 康 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 移植免疫研究室, 室長 (60321890)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複合組織移植 / 顔面移植 / 拒絶反応 / 免疫寛容 |
Outline of Annual Research Achievements |
四肢移植や顔面移植などの複合組織移植はまだその歴史が浅いため、移植片における拒絶反応が詳細に解析されておらず、その制御法も未だ開発途上にある。そこで本研究では、マウスモデルを用いて複合組織移植片における拒絶反応の網羅的解析を行うことにより、複合組織移植後の基礎的免疫学知見及び免疫病理学的拒絶スコアの構築、さらに移植片特異的免疫寛容誘導法の樹立を目的としている。 2022年度は複合組織移植片の各組織における拒絶反応を網羅的に解析するために、2021年度に確立したマウス異所性半顔面移植モデルのドナー及びレシピエントにそれぞれC3H/He(H-2k)及びC57BL/6(H-2b)マウスを用いた異系モデルを作製し、解析に使用した。対照としてドナー及びレシピエントにC57BL/6(H-2b)マウスを使用した同系モデルを作製した。異系移植片は移植後約12日で拒絶により全て壊死したことから、拒絶反応の経過を観察するため、移植後2、6、9日目の移植片を摘出し、ホルマリン固定後パラフィン切片を用いたヘマトキシリン&エオジン染色を行い、眼瞼、鼻腔、皮膚、血管、耳介軟骨、口腔粘膜、前上顎骨、及び切歯根部組織の病理像の変化を同系モデルと比較観察した。 現在までにマウス顔面組織を用いた複合組織移植モデルは世界で2例報告されているが、本モデルのように多種にわたる組織を含む移植片を用いたモデルは世界で初めてであり、このマウスモデルを用いて得られた詳細な情報は今後の臨床における複合組織移植の診断基準、治療方針、予後の改善に大きく貢献すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画では2022年度までに(1)マウス移植手技の確立、(2)異系移植モデルを用いた拒絶反応の網羅的解析、(3)移植片を構成する各組織における拒絶反応抑制効果の検討、(4)遺伝子改変モデルを用いた拒絶応答メカニズムの解明から複合組織移植における基礎免疫病理学的拒絶スコアの構築までを行う予定であったが、現在は(2)を実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の研究計画に沿って実験を遂行する。 (1)異系移植片に対する拒絶応答の病理的解析:前年度からおこなっている解析の終了。 (2)移植片への浸潤免疫担当細胞の経時的解析:異系顔面移植後のレシピエントの脾臓、リンパ節及び移植片より抽出した浸潤細胞を使用して、マルチカラーフローサイトメーターを用いてエフェクターT 細胞のサイトカイン産生能、副刺激関連分子・免疫チェックポイント分子の発現、メモリーマーカーの発現、単球・マクロファージ・樹状細胞サブセットなどの定量的解析を施行し、経時的な免疫応答を検討する。 (3)免疫抑制剤を使用した移植片維持と拒絶反応抑制効果の検討:異系移植モデルに実臨床で使用されている免疫抑制剤tacrolimus (FK)、 mycophenolate mofetil (MMF) 、prednisone)について、単剤あるいは併用による移植片維持を試み、経時的な画像解析及び病理組織学的解析により各組織の免疫抑制効果を検討する。 (4) 遺伝子改変マウスや抗体療法による拒絶応答メカニズムの解明 :異系移植モデルマウスに基本的な拒絶応答因子の遺伝子改変マウスや抗体治療を施行し、経時的な画像解析及び病理組織学的解析 により各組織の拒絶応答の変化を検討する。 (5)複合組織移植における基礎免疫病理学的理論及び免疫病理学的拒絶スコアの構築:(1)ー(4)の研究結果を総合判断し、大動物実験あるいはヒトの複合組織移植に応用可能な 基礎免疫病理学的理論の構築と治療応答性を考慮した拒絶反応の免疫病理学的拒絶スコアの構築を図る。
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Causes of Carryover |
当初計画より経費の節約ができたため。 次年度の物品購入に使用する予定。
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Research Products
(1 results)