2023 Fiscal Year Research-status Report
EBV関連胃癌におけるエピゲノム異常によるARID1A遺伝子の発現制御機序の解明
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21K08675
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
齋藤 元伸 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (90611749)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | EBV関連胃癌 / エピゲノム異常 / ARID1A遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
EBV関連胃癌におけるDNAプロモーターメチル化の状態をパブリックデータベースであるGEO(Gene Expression Omnibus)に登録されたメチレーションアレイデータを用いて解析をおこなった。アレイデータと同じにダウンロードした臨床病理学的因子を合わせて解析をおこなった結果、EBV関連胃癌はEBV陰性胃癌と比べて非常に多くの遺伝子のプロモーターが高メチル化状態、つまり、遺伝子発現がなされていない状態であることがわかった。実際に細胞実験で検討したところ、EBV感染陽性MKN7胃癌細胞は非感染コントロール細胞と比べて、高メチル化状態であることが確認された。これらの結果から、EBV感染自体が細胞内の数多くの遺伝子のプロモーター高メチル化を促すことが確認され、EBV関連胃癌のエピゲノム異常の特徴を捉えることができた。次に、これらの解析データから胃癌のドライバー遺伝子であるARID1A遺伝子に着目したところ、EBV関連胃癌とEBV感染陽性胃癌細胞株においてARID1Aプロモーターは高メチル化されてないことがわかった。同じサンプルにおける、ARID1A mRNAの発現解析をマイクロアレイ(GSE31787)でおこなうと、EBV感染に伴うARID1A mRNA発現の影響は認められなかった。つまり、EBV関連胃癌におけるARID1Aタンパクの発現低下は、ARID1A遺伝子の転写の段階ではなく、翻訳後の段階でおこることがわかった。そのため、EBV関連胃癌の特異的なエピジェネティク異常に関与するEBVマイクロRNAに着目した。ARID1Aの3'UTR領域に特異的に結合しうるEBVマイクロRNAをデータベースにて検索し、その同定されたEBVマイクロRNAを実際の細胞実験に用いてARID1A発現の低下の有無について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析に用いるマイクロアレイデータをGEOデータベースからダウンロードして、EBV関連胃癌におけるDNAメチル化状態の解析ができた。また、EBV関連胃癌における遺伝子発現のマイクロアレイもGEOデータベースからダウンロードして、メチル化データと合わせての解析をおこなえた。EBV胃癌に特徴的なエピジェネティクスの因子であるEBVマイクロRNAを用いての細胞実験においてはARID1A発現が制御されることを確認した。関連解析において、このEBVマイクロRNAはARID1A発現を低下させると同時に、PD-L1発現を上昇させることが明らかとなった。この結果は非常に興味深いものであるため、その機序の解明のために更なる実験系をくむことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
関連解析において明らかとなった、ARID1A発現を低下させるEBVマイクロRNAがPD-L1発現を誘導する機序の解明をおこなう。
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Causes of Carryover |
本課題を進めているなかで、新たに得られた結果をさらに展開して追及する必要性がでてきたためであり、次年度にはその新たな目標を達成するための細胞実験をおこなう計画である。
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