2021 Fiscal Year Research-status Report
膵がん治療におけるO-GlcNAc分解酵素OGAの重要性とその分子機構の解明
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21K08680
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
川端 麗香 群馬大学, 未来先端研究機構, 講師 (90721928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 良祐 群馬大学, 生体調節研究所, 日本学術振興会特別研究員(PD) (30802855)
畑田 出穂 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (50212147)
大日方 英 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50332557)
横堀 武彦 群馬大学, 未来先端研究機構, 准教授 (60420098)
調 憲 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70264025)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵がん / 新規治療標的 / O-GlcNAc修飾 / KRAS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、膵がん治療におけるO-GlcNAc分解酵素OGA経路の重要性とその分子機構の解明を目指すものである。本年度は、KRAS変異陽性・陰性の膵がん細胞株を利用し、以下の2点を検討した。 1. KRAS野生型膵がん細胞でOGA必要性が高い理由は何か? 2. OGA遺伝子を阻害するとKRAS野生型細胞で細胞増殖能が抑制されるか?またそのメカニズムは何か? まず、KRAS野生型細胞でOGA必要性が高い理由を検討するにあたり、KRAS変異の有無で細胞内代謝が大きく異なることが原因である可能性を考えた。そこで、KRAS変異陽性細胞2種類と、陰性細胞2種類を対象に、質量分析計を用いて一次代謝物および解糖系に関わる代謝物を測定したところ、KRAS変異の有無でこれらの存在量が大きく変わることが分かった。また、培地を統一しても同様の結果が得られたため、培地の違いによる可能性は除外できた。次に、OGA阻害による細胞増殖能の抑制を確認するために、siRNA, shRNAによるノックダウン、阻害薬 (PUGNAC) を用いOGA経路を阻害し、細胞増殖能を生細胞数測定、コロニー数測定で評価したところ、KRAS野生型細胞株でKRAS変異細胞株よりも顕著な細胞増殖能の低下を認めた。細胞増殖能低下のメカニズムについては、現在、次世代シーケンサーを用いたRNA-seqおよび質量分析計を用いた代謝物測定により検討中である。CRISPR/Cas9法によるノックアウト細胞株の樹立を試みたが、ゲノム編集効率が20%前後と低かったため、CRONUS systemを用いDex/Dox誘導型ゲノム編集細胞株を作製したところ、平均50%前後の効率でゲノム編集細胞株を作成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
shRNA導入により安定的なOGA阻害株の樹立を試みたが、特にKRAS野生型細胞では細胞増殖が顕著に減少し、樹立には至らなかった。しかし、shRNA処理後にコロニー形成アッセイを行うことで、細胞増殖能の評価に至った。今後の動物実験などに安定的な阻害株が必要であるので、CRONUS systemを用いDex/Dox誘導型ゲノム編集細胞株を作製したところ、平均50%前後の効率でゲノム編集細胞株を作成することができた。 OGA阻害細胞のRNA-seqおよび代謝物解析を行っているところであり、また、抗がん剤併用の効果についても、実験準備を行っている。また、膵がん臨床検体100症例の臨床情報を収集し、FFPE標本よりゲノムDNAを抽出、KRAS変異解析を行っている。 以上の状況より、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 抗がん剤感受性への影響の検証 KRAS変異陽性・陰性の膵がん細胞株を利用し、OGA阻害による効果を検証する。shRNAによるノックダウン、CRONUS systemによるノックアウト、阻害薬 (PUGNAC等) を用いOGA経路を阻害し、抗がん剤 (5-FU, Gemcitabine) 感受性への影響を生細胞数測定あるいはコロニー形成アッセイで評価する。
2) 細胞増殖能・抗がん剤感受性を引き起こすメカニズムの検討 OGA阻害による効果をもたらす分子機序を以下のオミックス解析手法により明らかにする。・代謝物解析: UDP-GlcNAc等HBP代謝物を対象に、質量分析計LCMS-8050を用い定量する。・O-GlcNAc修飾・リン酸化タンパク質の網羅的解析: O-GlcNAc抗体、リン酸化セリン・スレオニン抗体で免疫沈降し、質量分析計TripleTOF 6600を用い網羅的に定量する。・網羅的遺伝子発現解析:影響を受ける遺伝子および下流シグナルをさらに明確にするため、次世代シーケンサーNextSeq500を用いたmRNA-seqにて全遺伝子発現データを得る。以上のデータよりOGA阻害による細胞増殖能・抗がん剤感受性の効果と関連する因子を抽出し、Ingenuity Pathway Analysisを用いて、分子ネットワークを同定する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症への対応等により、オミックス解析の実施が翌年度へずれ込んだため、次年度使用額が生じた。令和4年度にはこれらの解析が行える見込みであり、使用予定である。
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Research Products
(3 results)