2023 Fiscal Year Annual Research Report
膵液活性を緩衝し膵液漏の重症化を回避する新規組織癒着材の開発
Project/Area Number |
21K08681
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
石沢 武彰 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10422312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 大知 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50447421)
長谷川 潔 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (20292906)
長田 梨比人 埼玉医科大学, 医学部附属病院, 助教 (00815706)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵液漏 / 術中蛍光イメージング / 手術合併症 / 膵切除 / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
絹糸で両端を結紮したブタの内頚動脈を患者膵液に含浸させ、血管中央部の平滑筋細胞の核の変化と中膜の厚さとを病理学的にscoringする評価系を作成した。次に、膵頭十二指腸切除術を受けた患者4例から、術後3日目に膵液、腸液、および膵液漏の影響が少ない腹水を採取、これらの排液およびその混合液を作成し、ブタ内頚動脈を37度で48時間含浸させた。その後、前述の評価系に従って病理学的に評価を行うと、膵液単独および膵液に胆汁または腹水を添加した溶液では中膜の厚さは0.52-0.57mmの範囲にあり、平滑筋細胞の核に変化を認めなかったが(Grade 0)、膵液に腸液を混合した溶液では中膜の厚さは平均で0.32mmまで菲薄化しており、平滑筋の核も最高値(Grade 3)まで変性していた。更に、消化液中のどの酵素が上記の組織学的変化を惹起するのかを検討するため、ヒトの消化液における活性・濃度に調整した酵素試薬の溶液を作成し、同様にブタ内頚動脈を含浸させた。結果、中膜の菲薄化にはtrypsinおよびchymotrypsinが、平滑筋の核の変性にはtrypsinとelastaseが最も強く影響していた。試薬amylase、lipaseによる血管の組織学的変化の程度は軽微であった。そこで、膵液漏による血管壁の組織障害を軽減させる治療標的をtrypsinに設定した。患者膵液と腸液の混合液に、液中のtrypsin活性を十分に抑制し得る濃度の膵酵素阻害薬を添加し、これにブタ内頚動脈を含浸させると、中膜の厚さは平均値0.55mmに維持され、半数のサンプルで核の変化がGrade 0に保たれた。今後は、膵酵素阻害薬を高分子ポリマーまたは既存の医療材料に内包させて徐放性を確認するとともに、これらの材料を血管モデルに塗布し、trypsinや腸液を含む膵液に含侵させたときの組織変化の低減効果を評価する計画である。
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