2021 Fiscal Year Research-status Report
肝虚血再灌流障害に対するセンスオリゴヌクレオチドを用いた新規核酸医薬の開発研究
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21K08697
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
奥山 哲矢 関西医科大学, 医学部, 博士研究員 (80614966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 幹雄 立命館大学, 生命科学部, 教授 (40192687)
中竹 利知 関西医科大学, 医学部, 助教 (40779401)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | センスオリゴヌクレオチド / 核酸医薬 / 肝虚血再灌流障害 / iNOS / 一酸化窒素 / TNF-α |
Outline of Annual Research Achievements |
肝虚血再灌流障害が術後合併症の原因として問題となる拡大肝切除後のモデル確立を目指した。ラットに間欠的肝流入血流遮断の後、部分肝切除を行ってから再灌流し肝障害を誘導した(PM+PHラットモデル)。血流遮断の時間と再灌流後の残存肝のサンプリング時間について、iNOS遺伝子発現を指標に条件検討した。血流遮断の時間とサンプリングまで再灌流時間を決定した。確立されたPM+PHラットモデルに対し、ラット初代培養肝細胞にてiNOS アンチセンス転写物の誘導を抑制する薬剤のSulforaphaneおよびBaicaleinをラットに前投与し、障害後の肝臓組織、血液を採取した。肝虚血再灌流では、肝臓に過剰に血液が流入し肝重量が増加する。これらの薬剤を前投与することにより、虚血再灌流後にサンプリングした肝臓の重量の増加が抑制される傾向が得られたため、肝障害が緩和される可能性を示す結果が得られた。 さらに、条件検討で得た複数の血流遮断時間と再灌流時間の条件下の肝臓サンプルのTotal RNAについて網羅的mRNA発現のマイクロアレイ解析を実施した。発現変動の大きい遺伝子を選出し、それら遺伝子のアンチセンス転写物の有無を確認し、センスオリゴを設計して標的の候補として検討する予定である。 また、別の肝虚血再灌流障害が術後合併症の原因として問題となる肝移植のモデルであるIsolated Perfused Rat Liver装置を用いた移植肝モデル(IPRLモデル)において、臓器保存液に浸して一定時間保存した肝臓に対し、その門脈にiNOSのセンスオリゴを投与した。肝臓へ生理的緩衝液を灌流させて虚血再灌流障害を誘導し、臓器と灌流緩衝液を採取した。臓器における遺伝子発現や、灌流緩衝液への肝逸脱酵素活性を測定することで、肝障害に対するiNOSセンスオリゴの保護作用について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PM+PHラットモデルについて、iNOS遺伝子発現の誘導を指標に、虚血時間と再灌流後サンプリングまでの時間を決定しモデルを確立できた。 抗酸化作用や抗炎症効果を持つ薬剤SulforaphaneまたはBaicaleinは、ラット初代培養肝細胞にてiNOSアンチセンス転写物の発現抑制を介してiNOS発現・一酸化窒素合成の誘導を阻害する。これらの薬剤の前投与を行い、PM+PHラットモデルで肝障害後の肝臓および血液を採取した。肝臓への過剰な血液流入を示す肝重量の低下傾向を認めたため、肝障害緩和の可能性が考えられた。両薬剤による肝保護効果を検討するため、肝臓における遺伝子発現をRT-PCR法やWestern blottingなどの手法により解析を進めている。肝虚血再灌流障害において、これらの薬剤によるiNOSアンチセンス転写物への影響や肝保護効果を明らかにすることにより、iNOSアンチセンス転写物の肝虚血再灌流障害の役割の解明を目指す。 IPRL移植肝モデルについては、iNOSのセンスオリゴ投与を行っており、肝臓における遺伝子発現や灌流緩衝液において肝細胞障害を示す逸脱酵素活性などを測定することにより、iNOSセンスオリゴの肝保護効果の解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
確立されたPM+PHラットモデルに対し、iNOSセンスオリゴを投与し障害誘導後の肝臓や血液を採取する。iNOS・一酸化窒素やTNF-αなどの障害の誘導に関わる因子への影響を検討する。血中への肝逸脱酵素活性の測定や、肝臓組織の病理像(肝細胞死、好中球浸潤など)を解析することによって肝保護効果を検討する。 薬剤SulforaphaneやBaicalein以外にも、iNOSアンチセンス転写物の発現を抑制する薬剤を数多く調べている。これらの薬剤を肝虚血再灌流障害モデルラットに投与し、肝保護効果とiNOSアンチセンス転写物発現の抑制を検討することにより、肝障害におけるiNOSアンチセンス転写物の役割の解明を進める。 iNOSセンスオリゴとは別に、肝虚血再灌流障害モデルに投与するセンスオリゴの標的として、IL-1シグナル経路の因子の1遺伝子を候補とした。in vitro肝障害モデルであるIL-1β処理ラット初代培養肝細胞において、この標的遺伝子のアンチセンス転写物の発現を確認し、そのアンチセンス転写物に対して設計したセンスオリゴが遺伝子発現を抑制する効果を評価することができた。新規標的遺伝子のセンスオリゴについても肝虚血再灌流障害モデルへ投与し、肝保護効果を解析する予定である。 網羅的解析によりセンスオリゴを設計する遺伝子の候補を選出する。これらのセンスオリゴの効果を検討する。 IPRLモデルでのiNOSセンスオリゴの効果について解析を進める。PM+PHラットモデルでのiNOSセンスオリゴの効果と比較し、肝保護効果の機序の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
少額のため、次年度予算と合算させる。
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