2021 Fiscal Year Research-status Report
スキルス胃癌の微小環境構築・腹膜播種を阻止するためのレクチン含有細胞外小胞の開発
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21K08722
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Research Institution | The Noguchi Institute |
Principal Investigator |
土田 明子 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (70378024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八須 和子 (広瀬和子) 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (30625447)
井手尾 浩子 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (90180322)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / 腹膜中皮細胞 / 複合体形成 / 蛍光標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高転移性胃癌細胞が分泌する細胞外小胞の性状および機能解析を行い、腹膜中皮細胞を標的化する際にガレクチン-4が関与するかを明らかにすることを目的とする。また、ガレクチン-4発現細胞とKO細胞が分泌する細胞外小胞を比較することで、ガレクチン-4が腹膜中皮細胞へ与える影響について調べ、腹膜転移を促進させるメカニズムの解明を目指す。 当該年度は、各NUGC4細胞クローン株(wild株, Mock株, KO株, Rescue株2種)の細胞外小胞の精製し特性解析を行うとともに、腹膜中皮細胞(MeT5A)による細胞外小胞の取り込み方にガレクチン-4の発現あるいは腹膜播種能が相関しているかどうかを調べた。 KO株以外のすべてのクローン株において、各細胞外小胞にガレクチン-4が発現していることが確認でき、さらにCell Lysateでは単量体のガレクチン-4が主であるのに対して、細胞外小胞では2量体、complexの状態で存在している割合が増加していることが明らかとなった。Complexを形成する意義については今後明らかにしていくことにする。 細胞外小胞を蛍光標識して腹膜中皮細胞(MeT5A cells)に取りこまれるかどうかを共焦点レーザー顕微鏡にて観察した結果、NUGC4細胞株由来細胞外小胞が腹膜中皮細胞に取り込まれることは分かったが、その取り込み量がガレクチン-4の発現量や腹膜播種能に相関することはなかった。よって、ガレクチン-4の発現は細胞外小胞の取り込みに関して直接関与していない可能性が高く、取り込まれた後に何かしらの影響を与えているのかもしれない。今後の展開として、細胞外小胞の添加後に腹膜中皮細胞に与える影響を重点的に調べていくことにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、各NUGC4細胞クローン株(wild株, Mock株, KO株, Rescue株2種)の細胞外小胞の精製しエクソソームマーカーの発現などの特性解析を行うとともに、腹膜中皮細胞(MeT5A)による細胞外小胞の取り込み方にガレクチン-4の発現あるいは腹膜播種能が相関しているかどうかを調べた。 KO株以外のすべてのクローン株において、各細胞外小胞にガレクチン-4が発現していることが確認でき、細胞外小胞ではガレクチン-4が2量体、もしくはそれ以上のcomplexの状態で存在している割合が増加していることが明らかとなった。ガレクチン-4が多量体を形成する意義や、腹膜播種能との関連性のある分子の同定については今後の課題である。 細胞外小胞を蛍光標識して腹膜中皮細胞(MeT5A cells)に取りこまれるかどうかを共焦点レーザー顕微鏡にて観察した結果、NUGC4細胞株由来細胞外小胞が腹膜中皮細胞に取り込まれることは分かったが、その取り込み量がガレクチン-4の発現量や腹膜播種能に相関することはなかった。よって、ガレクチン-4の発現は細胞外小胞の取り込みに関して直接関与していない可能性が高く、取り込まれた後に何かしらの影響を与えているのかもしれないと考えた。そこで、細胞外小胞を腹膜中皮細胞に添加しどのような影響を与えるかを調べたところ、腹膜播種を起こすWild株, Mock株, Rescue株の細胞外小胞の添加によってMMP-2やTIMP-2の発現が少し亢進することや、TGFbeta 受容体の発現量が変化することが明らかとなり、細胞外小胞ががん微小環境の構築にかかわっていることが推察された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、細胞膜上の糖脂質の組成が腹膜播種に関連している可能性を見出していることから、細胞外小胞に局在する糖タンパク質および糖脂質について、質量分析により解析し、腹膜播種能に関連して変化するような特徴的な糖鎖の有無を調べる予定である。腹膜中皮細胞表面へのガレクチン-4の直接的な結合の有無も明らかにしつつ、細胞外小胞の膜の組成や接着に関与すると考えられるCD44などの重要分子の発現・局在などを調べることにより、腹膜中皮細胞への集積に最も関与していそうな分子を明らかにする。また、腹膜播種を起こす細胞株由来の細胞外小胞と、起こさない細胞株由来の細胞外小胞の形状・性質を徹底的に比較検討することで、腹膜播種を起こす要因を見つけ出すことにする。 細胞外小胞の内包物質についても検討を加えるため、受託解析によるmicroRNA解析も行う予定である。これによって、腹膜播種を引き起こす要因が、細胞外小胞の内部に存在するのか、それとも小胞の膜に存在するのかを明確にできると考える。その結果を踏まえて、腹膜播種を阻止するための戦略を立て直すことにする。 今後の方針として、低分化型胃癌細胞の細胞外小胞の性質・形状を明らかにしつつ、腹膜中皮細胞への細胞外小胞の添加後に腹膜中皮細胞が受ける影響を重点的に調べていくことにする。血管新生能や基底膜の破壊、腹膜中皮細胞の繊維化など、腹膜播種を引き起こす際の重要因子を突き止めることで、低分化型胃癌細胞の細胞外小胞に局在するガレクチン-4の役割を明らかにする。
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