2022 Fiscal Year Research-status Report
CA19-9を標的とした共有結合DNAアプタマーによる膵癌新規治療法の開発
Project/Area Number |
21K08724
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 透 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70645796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 聡 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50322813)
平岡 圭 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (10719587)
YANG JAY 北海道大学, 医学研究院, 客員教授 (60897619)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵癌 / CA19-9 / DNAアプタマー |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、細胞表面糖鎖抗原CA19-9を標的とし膵癌細胞にsiRNA を選択的に導入する共有結合DNAアプタマーを開発し、K-rasG12D 遺伝子およびfibulin-3 遺伝子発現を抑制し、膵癌増殖抑制効果を検討する予定であった。実際に、細胞表面糖鎖抗原CA19-9とDNAアプタマーの結合を確認する際に、糖鎖抗原CA19-9基質の入手が困難であった。また、CA19-9は血中に分泌されるため、膵癌細胞へのAptamerの結合の効率が低下する可能性が考えられた。そこで、血中に分泌されることのない膵癌細胞の表面マーカーの一つであるMUC1 isoformYに対するAptamerを利用することとした。①MUC1 isoformY選択的に細胞内に核酸を取り込むことが可能な共有結合DNAアプタマーの作成、②MUC1 isoformYを標的としたDNAアプタマーとsiRNAを結合したDNA aptamer-siRNAによる K-rasG12Dおよびfibulin-3 遺伝子発現抑制実験、①②を組み合わせた共有結合DNA-Aptamer-siRNAを用い、ヒト膵癌同所移植モデルマウスによる前臨床試験を施行する。 現在、膵癌細胞株のMUC1 isoformYの発現状況をWestern blot、RT-PCR、免疫染色で確認した。MUC1 isoformY陽性の細胞株に対するDNA aptamer-siRNAの取り込み実験を行い、蛍光顕微鏡でDNA aptamer-siRNAが取り込まれていることを確認した。 また、krasに対するsiRNAの効果を確かめるためにsiRNAをトランスフェクションし、western blotとqPCRでk-rasタンパク質、mRNAをノックダウンしていることを確認した。しかし、共有結合のないDNA aptamer-siRNAによる細胞増殖抑制実験を行ったが 有意な細胞増殖抑制を認めることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はCA19-9に対するアプタマーを使用し、DNA aptamer-siRNAを作成する予定であったが、①細胞表面糖鎖抗原CA19-9とDNAアプタマーの結合を確認する際に、糖鎖抗原CA19-9基質の入手が困難であり、②CA19-9は血中に分泌されるためアプタマーが膵癌細胞に結合する効率が低下する懸念があった。そこで、他の膵癌に特異的な細胞表面マーカーを検索し、先行研究で発表されているMUC1 isoformYという細胞表面マーカーに着目した。MUC1 isoformYはMUC1のスプライシングバリアントであり、血中に分泌されることのない膜タンパクで腫瘍細胞に特異的に発現している。正確な機能の同定はされていないが、癌細胞の増殖や浸潤に影響を及ぼしている可能性が示唆されている。以上より、MUC1 isoformYは膵癌細胞に特異的に反応し、血中に分泌されることがないため、MUC1 isoformYをターゲットにしたアプタマーのほうがより効率的に膵癌細胞に作用するDNA aptamer-siRNAを作成することができると判断し変更した。今後MUC1 isoformYに対するアプタマーを用いて、細胞実験系まで成功すれば同様の手順でCA19-9に対するアプタマーを用いた実験を行うことは技術的に可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. MUC1 isoformYを標的とした共有結合DNAアプタマーの開発 ①MUC1 isoformYのDNAアプタマー配列に、共有結合を付加する。②共有結合修飾は、T残基をInt-Octadynyl-dUで置き換え、銅触媒によるアジド-アルキンによるSO2F反応性コアを付加する。T残基修飾の配置で立体構造が変化し蛋白結合を阻害する場合があるため、配置が重要となる。circular dichroism法でスクリーニングで折り畳み構造に変化がないことを確認する。修飾のないDNA aptamer-siRNAでは細胞増殖を抑制することができなかったが共有結合DNAアプタマーを使用すると結合効率が上がるため、細胞増殖抑制する可能性がある。共有結合DNAアプタマーを蛍光標識し、western blotで共有結合の有無を評価する。現在、共有結合の条件、評価方法を検討している段階である。 2.共有結合DNA aptamer-siRNAの細胞増殖抑制実験①MUC1 isoformY targeting DNAアプタマーとsiRNAのキメラ(MUC1 isoformY-DNA aptamer-siRNA)を“sticky-bridge” universal linker approachで作成する。DNAアプタマーの5’側にsiRNA配列の UU末端とアニール結合する。②MUC1 isoformY-DNA aptamer-siRNAを膵癌細胞株に投与し、各蛋白発現をWestern blotで、増殖抑制効果をMTTアッセイで評価する。③ KrasG12Dおよびfibulin-3に対するDNA aptamer-siRNAの同時投与も検討する。 3.DNA aptamer-siRNAを用いたヒト膵癌同所移植モデルマウス実験①ヒト膵癌細胞株の同所移植モデルマウスを作成し、共有結合MUC1 isoformY-DNA aptamer-siRNAをipまたはiv投与の後、腫瘍内の取り込み率を蛍光顕微鏡で評価する。②同モデルマウスにおける腫瘍縮小効果を検証する。
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Causes of Carryover |
試薬の供給が遅れたため、「今後の研究の推進方策」に記載した内容に従って使用する予定である。
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