2021 Fiscal Year Research-status Report
重粒子線による代償性肝肥大を利用した肝腫瘍に対する新たな集学的治療法の開発
Project/Area Number |
21K08728
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
渋谷 圭 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50511490)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重粒子線治療 / 肝腫瘍 / 代償性肝肥大 / 集学的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
重粒子線による代償性肥大を利用した集学的治療法の可能性を探索するため、ラットにおいてX線および炭素イオン線の部分肝照射後の代償性肝肥大を確認し、反応の基礎的な知見を得ることを目的に実験を行った.7週齢オスのWisterラットを全身麻酔下にて開腹し,同一個体内で照射葉と非照射葉を得るため肝の腹側葉と背側葉の間に遮蔽板を挿入した.上腹部以外も遮蔽し,X線の場合は腹側肝葉に直接60 Gyを照射した.炭素線の場合には自作のボーラスを追加し,拡大Braggピーク中心で60 Gy(物理線量)を照射した.照射後に閉創し,照射前と照射後1,4,8,12週目に肝葉重量/体重比の測定,血液検査,肝組織のサンプリングを行った.各照射群で血中AST, ALT, ALPの上昇を認めたが,肝予備能(T-BilとALB)への影響は認めなかった.各照射群とも腹側肝葉は経時的に萎縮が進行し,背側肝葉は代償性に肥大した.炭素線照射群の腹側肝葉では萎縮前に一過性の肥大を認めた.Ki-67発現は,X線を照射された腹側肝葉では著明に低下し,背側肝葉では代償性肥大の時期に一致して亢進した.これにより、X線,炭素線とも照射後に非照射葉の肝細胞増殖が促され,代償性肥大が生じることが確認された. 実臨床例の検討として、代償性肝肥大を確認するための基礎データを得るため、EOB-MRIを用いて炭素イオン線による放射線肝障害の閾値線量の推定を行った。炭素イオン線による放射線肝障害の閾値線量は背景肝予備能(Child-Pugh分類)によって異なっており、Child Aでは51.8Gy(RBE)と推定され、報告されているX線による肝障害の閾値線量よりも大きいことが示唆された。 これらの治験をもとに次年度以降で基礎的、臨床的に重粒子線による代償性肝肥大の確認とPVEとの比較を行っていく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットを用いた基礎的な検討では重粒子線(炭素イオン線)による代償性肝肥大効果が確認できた。想定通りの結果であり、コントロールとなるPVEモデルとの比較検討にすすめる状況となっている。臨床的な画像データを用いた検討では、重粒子線による肝障害の閾値線量を推定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
重粒子線治療での肝実質の容積変化に関するデータが取得できており、今後これらのデータを解析し、PVE施行例のデータと比較することで臨床例での代償性肝肥大を解析できる状況にある。ラットのPVEモデルの作成が課題となるが、必要に応じ本学総合外科学講座、肝胆膵外科学の協力を得て行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行によりオンライン化が進んだため、旅費の使用額が想定よりも少なくなっている。計画としてこの部分を次年度以降に研究を促進するための物品費、人件費として用いることを想定している。
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