2022 Fiscal Year Research-status Report
Bile cell-free DNAを用いゲノム多様性を標的にした胆道癌新規治療
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21K08748
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中川 圭 東北大学, 大学病院, 講師 (20542294)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 修一 東北大学, 大学病院, 助教 (30844451)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 胆道癌 / 胆汁 / ct-DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のゲノム解析技術の進歩により、胆道癌の全ゲノム解析の結果が報告され、胆道癌は多種多様な遺伝子変異を持ちheterogeneousな遺伝子背景が特徴である。胆道癌の約40%において、新規治療の対象となりうるactionableな変異を有していると言われており、遺伝子変異に則した個別化医療が期待されている。また、遺伝子変異の蓄積はfounder cellと併存可能な多数のsubcloneを生み、その一つが転移巣を形成する。さらに治療過程において、治療抵抗性を持つsubcloneを生じ、癌の再増悪を来たす。このような癌のクローン進化を追随することができれば、遠隔転移巣への治療介入や治療耐性克服のための新規治療に貢献できる。 ゲノム解析を軸とした新規バイオマーカーとして、circulating tumor DNA (ct-DNA)が注目されている。血中ct-DNAとは細胞死により血中に漏れ出た癌細胞由来DNAの一部であり、①病勢を反映する新たなバイオマーカーとして、または、②個別化医療や治療抵抗性に関わるゲノム情報として、有用性が報告されている。しかし一方で、課題は多い。特に胆道癌は間質の豊富な癌であるため、血中ct-DNA陽性率が低く、heterogenousな遺伝子背景を有する胆道癌は、fragmentの小さいct-DNAでは遺伝子変異の全容を明らかにすることは困難である。 本研究では新たなリキットバイオプシーとして、胆汁中のcf-DNAに注目した。胆汁内には癌細胞が直接こぼれ落ちるため、胆汁中cf-DNAは fragmentの長いより良質のDNAを大量に抽出でき、血中ct-DNAに比べゲノム解析サンプルとして有用である可能性が高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は胆道癌患者の血中、胆汁中のcf-DNAを継時的にゲノム解析することで、胆汁cf-DNAの有用性を検討することである。方法①:切除組織のDNA解析をコントロールとして、胆汁cf-DNAが血中ct-DNAに比べ癌細胞のゲノム変異を網羅的に表現していることを示す。方法②:治療経過における胆汁cf-DNA解析を複数回行うことで、癌のクローン変化を明らかにし、治療耐性における遺伝子変異の関与を示す。結果:これまで胆道癌患者から11の胆汁及び35の血液サンプルを採取した。このうち胆汁9サンプル及び血液34サンプルからcf-DNAの抽出が可能であった。胆汁cf-DNAは血中cf-DNAと比べ、有意に大きなfragmentの採取が可能で(median 5003bp vs 140bp, p<0.001)、抽出濃度も有意に高かった(median 1722 ng/ul vs 8.3 ng/ul, p<0.001)。胆汁cf-DNAは血中cf-DNAと比べ、DNA解析サンプルとして良好な質を有すると思われた。また胆汁サンプルを採取した11例のうち10例において切除胆道癌サンプルから腫瘍DNAを抽出できた。現在、胆汁cf-DNA、血中ct-DNA及び腫瘍DNAサンプルの網羅的ゲノム解析を施行中である。解析を行うための外注先の選定に時間を要したが、最終的にはArcher社へ依頼することとした。胆汁cf-DNAが血中ct-DNAと比べ、切除胆道癌腫瘍の遺伝子変異をより網羅的に表現していることを示し、単一患者の胆汁cf-DNAの解析することで、胆道癌のゲノム進化を明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当科の胆道癌患者より胆汁、血中および切除サンプルからDNAの抽出を行う。解析は、宮城がんセンター研究所との共同研究により、Archer社のLiquidPlexを用いたターゲットシーケンスを行うこととし、現在準備をしている。胆汁及び血中のゲノムを包括的に解析することで、多様性を獲得していく胆道癌ゲノム進化の全貌を把握できると考える。これまでクローン進化の観点から胆道癌ゲノムを解析した報告はなく、再発・転移の機序の解明や治療耐性への治療介入の可能性において、ゲノム進化に即した個別化治療を提供できると考える。
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Causes of Carryover |
ゲノム解析を外注してるが、コロナ渦によって測定コストが高額になり、さらに一度に依頼できる解析数が減少、期間も遅延していた。今年度、集中的に測定・解析をおこなえるよう調整した。
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