2021 Fiscal Year Research-status Report
化学療法とIL-18 阻害抗体の併用による膵がん治療に向けた基盤的研究
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21K08753
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田島 義証 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (20264228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 有紀 島根大学, 医学部, 医科医員 (60868719)
浦野 健 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (70293701)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵がん / インターロイキン-18 / 5-フルオロウラシル / 活性化断端抗体 / モノクローナル抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵がんは、今日においても治療困難ながんの一つであり、有効な治療手段の開発が求められている。炎症性サイトカインの一つであるインターロイキン-18(IL-18)は、近年膵がんの発症や進展に寄与するという報告があるが、がん局所におけるIL-18発現の詳細や、治療対象としての可能性については不明である。一方で、膵がん治療に用いられる抗がん剤5-フルオロウラシル(5-FU)は膵がん細胞内で活性型 IL-18を誘導する。治療と共に炎症が惹起され、抗がん効果を減弱させている可能性がある。 IL-18は炎症性サイトカインの一つで、細胞内のIL-18はタンパク質分解酵素Caspase-1/4で切断され、はじめて活性型IL-18 (cleaved IL-18, cIL-18)となる。本研究課題では、特に患者予後の非常に悪い膵がんに着目し、がん細胞やがん微小環境に対するIL-18の役割を明らかにするとともに、5-FU と IL-18 阻害抗体を併用する新しい膵がん治療法の可能性を示すこと、また膵がん組織における活性型 IL-18の発現状態を正確に調べ、診断応用への可能性を示すことである。 最近申請者らは活性型 IL-18のみを認識し、強い阻害効果を持ち、かつ免疫組織化学染色にも利用できる抗体を作製・報告した。この活性型 IL-18のみを特異的に認識する抗体を作製したことで、膵がんや大腸がんなどでも使用される5-FUが活性型 IL-18 を増加させることを初めて確認できた。この抗体が大きな強みとなっている。そのため、活性型IL-18を対象にした新規治療法や診断応用の確立に向けた研究を独自に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IL-18の発現と、膵がん細胞の増殖能・造腫瘍性への影響を明らかにするため、遺伝子編集技術を利用してIL-18タンパク質を持たないMIA PaCa-2ヒト膵がん細胞株(IL-18 KO/MIA PaCa-2)を数種類樹立した。in vitroにおいては生細胞数の検出に汎用されている MTT アッセイを用い、IL-18 KO/MIA PaCa-2細胞の増殖を経時的に測定評価したが、親株との間に増殖能の差異は認めなかった。また、IL-18 KO/MIA PaCa-2細胞の造腫瘍性への影響についてヌードマウスを用いたin vivo の実験で確認したが、in vitro 同様に親株との間に腫瘍の増大には差を認めなかった。 申請者らが現有しているヒト活性型IL-18のみを認識するモノクローナル抗体は、活性化断端配列が異なるため、マウス活性型IL-18を認識することができない。担がんマウスでのがん微小環境を確認し膵がん組織での活性型IL-18を正確に評価するため、マウス活性型IL-18を特異的に認識するモノクローナル抗体を作製する必要がある。マウス活性型IL-18断端ペプチドを用いて、マウス活性型IL-18を特異的に認識するモノクローナル抗体を2種類作製した。今後、担がんマウスモデルによる、膵がん組織での活性型 IL-18 の評価とともに、血清中のマウス活性型IL-18を検出できるサンドイッチELISA測定法を樹立する。 活性型ヒトIL-18認識抗体をもちいて40例の膵がん組織について免疫組織化学染色を終了した。現在、解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も、担がんマウスモデルによる、抗がん剤5-FUとIL-18 阻害抗体の併用治療効果の評価など予定通り計画している研究課題を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究は順調に進んでいるが、マウス活性型IL-18を特異的に認識するモノクローナル抗体の作製について、当研究室の既存の研究資材を有効活用したため、物品費の使用が少なくてすんだ。ウクライナ情勢により、今後物品費が高騰する可能性があり、作製した抗体を用いたマウス実験を行っていくために、マウスの購入費用およびその他の実験資材について繰越分を使用していく予定である。
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Research Products
(13 results)