2021 Fiscal Year Research-status Report
臨床検体のシングルセル解析による大腸癌幹細胞の代謝機構の解明
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21K08777
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
板倉 弘明 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90850313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥崎 大介 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (00346131)
山本 浩文 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30322184)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 初代培養 / 大腸癌 / 癌幹細胞 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞とは、自己複製能、多分化能、造腫瘍能を有する少数の癌細胞集団であり再発や転移の原因となるため、癌幹細胞を根治させることが究極の癌治療と考えられる。しかし、大腸癌の癌幹細胞マーカーでLGR5を標的とした治療戦略がマウス実験では思いのほか効果に乏しかったという報告がなされ、新たな治療戦略の開発が望まれている。 正常組織と比較し、癌組織は血流の不均衡が大きく、糖や酸素などの供給が不足することが多いが、癌細胞の増殖や分化は迅速かつ多くのエネルギーを必要とする。そのため多くの癌細胞は解糖系によりATPを産生する。一方、癌幹細胞は正常組織における幹細胞と同様、解糖系よりも酸化的リン酸化によるATP産生が亢進しているとの報告があるが、逆に解糖系が亢進しているという報告もあり一貫していない。そこで本研究では、癌幹細胞の代謝機構に注目することとした。これまでの報告では間質を含まない条件で長期培養された細胞株を用いたことにより、本来の代謝特性を失っている可能性や、癌幹細胞の絞り込みの方法や細胞ごとにマッチする癌幹細胞マーカーも多様であることから研究によって異なる細胞集団を捉えている可能性がある。 本研究では臨床検体から癌細胞を採取し、マウスに移植したPDXモデルを使用する。更に幹細胞を高めるためにマウス腫瘍が発育した時点で腫瘍をばらして培養し、スフェロイドを形成させる。このスフェロイドを1個1個マウスの皮下に射ち込むと1個のスフェロイドからはなかなか腫瘍を造らないが、中には再び腫瘍を形成するものがあり、この腫瘍は幹細胞性に富み、かつ腫瘍微小環境を備えていることになる。初年度は10例の大腸癌患者の標本から癌組織を採取しPDXを作成し、全例でスフェロイド培養と凍結保存に成功した。うち3例で1個のスフェロイドからマウスに腫瘍が形成され、3例分の腫瘍をbulkでRNAシークエンスに提出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に大腸癌切除組織から採取した癌組織からマウスにPDXを造り、これをばらしてスフェロイドを作製し、凍結保存する流れを固めることができた。たった1個のスフェロイドから1例につき1-2個の腫瘍形成を認めており、幹細胞性に富み間質成分を有した目的の腫瘍の数を増やしていくことは十分可能であると考えられる。3例をRNAシークエンスに提出しており初年度はおおむね予定通りといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
症例数を増やしていくと同時にRNAシークセンスの結果を分析してゆく。4例目からは腫瘍の半分をRNAシークエンスに、半分を組織学的評価(血管内皮マーカー CD31、vWF, 血管分布、低酸素マーカーCA9)に与し、併せて評価してゆく。
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