2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞内共生microbiomeからみた新規膵癌進展メカニズムの解明
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21K08780
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江口 大樹 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90726390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 隆晴 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (60611283)
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (70586859)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵癌 / 細胞内細菌 / microbiome |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は非常に予後不良な疾患であり、既存の抗癌剤治療や放射線治療に抵抗性を示すことが多い。近年、これまで無菌の臓器と考えられてきた膵組織内、膵腫瘍内にもmicrobiomeが存在し、免疫寛容の誘導を介して膵癌の進展を促進していることが報告され、microbiomeと膵癌進展との関係が注目されている。本研究では、腫瘍細胞内に生きて存在するmicrobiomeが腫瘍細胞のbiologyに影響を与えている可能性を考慮し、腫瘍細胞内microbiomeに着目した癌の進展や転移メカニズムの解明を目的とする。 ステップ【1】で、ヒトおよび遺伝子改変膵癌自然発生マウスの膵癌組織を用いて抗LPS抗体による免疫組織化学染色検査で、腫瘍内microbiomeの存在を確認した。 ステップ【2】として、ヒト膵癌切除組織から抽出したDNAを用いて、細菌特有の16SrRNA領域プライマーによるPCR増幅を行い、ヒト膵癌組織中の細菌の存在を示した。ヒト膵癌組織や肝転移巣の切除組織を用いてNGSによるメタゲノム解析を進める予定である。 ステップ【3】として、膵腫瘍内に存在すると予後不良と報告されている歯周病菌とヒト膵癌細胞株との直接共培養実験で癌細胞の遊走能および浸潤能が促進されていることを突き止めた。また、蛍光標識したmicrobiomeが膵癌細胞株に取り込まれることをTimelapseでリアルタイム撮影することに成功した。 以上の結果より、microbiomeが膵腫瘍細胞内に侵入し、癌細胞の進展へ影響を及ぼしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ステップ【1】でヒトおよびマウスで腫瘍内microbiomeの存在を確認できた。細菌のみ利用できるD-アラニンを蛍光標識し、細菌の腫瘍細胞内への取り込みを電子顕微鏡で評価予定である。 ステップ【2】として、ヒト膵癌切除組織から抽出したDNAを用いて、細菌特有の16SrRNA領域プライマーによるPCR増幅を行い、正常膵組織と比較して膵癌組織に多く細菌由来のDNAが存在しており、腫瘍内microbiomeが癌のbiologyに影響を与えている可能性が示唆された。 ステップ【3】として、歯周病菌Fusobacteirum nucleatumとヒト膵癌細胞株との直接共培養実験で癌細胞の遊走能および浸潤能が促進されており、細菌感染腫瘍細胞でのみ産生が促進されているケモカインを同定した。このケモカインの受容体を中和抗体で抑制すると、遊走能は強く抑制された。歯周病菌を膵癌細胞同所移植マウスに局所注射することで癌の進展にどのような影響を及ぼすか検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
膵腫瘍細胞が歯周病菌に感染することにより、癌の進展に影響を及ぼす可能性が示唆された。歯周病菌が膵腫瘍内さらには膵腫瘍細胞内へ到達する経路を評価するために、蛍光標識した歯周病菌をマウスに蛍光投与し、膵腫瘍内や膵腫瘍細胞内で蛍光標識細菌が確認できるか、電子顕微鏡で評価予定である。同様に膵癌肝転移モデルに歯周病菌を投与して肝転移巣へ到達するかも評価予定としている。 細菌感染膵癌細胞を膵同所移植し、特定のmicrobiomeを標的とした抗生剤を投与し、①ゲムシタビン単独群、②ゲムシタビン+抗生剤併用群、③抗生剤単独群に分けて予後や腫瘍径、遠隔転移の有無を評価予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度は培養用試薬、器材などに使用予定である。
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