2023 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌発癌と浸潤転移能獲得機構における低分子G蛋白Ralの機能解析
Project/Area Number |
21K08791
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大塚 英郎 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (50451563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 久徳 東北大学, 加齢医学研究所, 非常勤講師 (90291426)
石田 晶玄 東北大学, 大学病院, 講師 (90619660)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Ral / 膵癌 / ATM / gemcitabine |
Outline of Annual Research Achievements |
Ral(Ras like) GTPase(以下,Ral)は,Ras familyに属する低分子量GTP結合蛋白であるが,その活性化因子RalGEFはRasの標的分子であり,RalはRasの下流で活性化し機能する.Rasが高頻度に変異し,Driver遺伝子とされる膵癌では,その下流で機能するRalが悪性化に重要であると示唆される.これまでに我々は、RalGAP発現を抑制し、Ralの活性化した膵癌細胞で腫瘍の増殖能,浸潤・転移能が著明に亢進することを明らかにした.本研究ではRalGAP cKOマウス等を駆使して膵癌の悪性化,浸潤・転移能の獲得機序を分子レベルで解明するとともに,ヒト検体の解析よりRal-RalGAPの臨床的意義を明らかにし,膵癌治療における新たな標的分子としての可能性を検証することを目的とする。 他方、Ralの活性は、放射線などによるDNA障害時の修復機構(DDR)において重要であるとの報告が散見される。すなわち、膵癌などの放射線治療抵抗性の癌腫では、放射線照射後の修復機構、癌細胞の生存にRalの活性化が深く関与するとされる。我々は、DNA損傷時のDDR機構、特に、Ataxia telangiectasia mutated(ATM)分子に着目し、その膵癌での役割、Ralとの関与について新知見を得た。ATMは変異の頻度の高いDDR遺伝子の一つで、膵癌では、体細胞変異が2-18%、生殖細胞変異が1-34%と報告されている。ATMは、細胞周期チェックポイントキナーゼであり、ゲノム安定性のためのDNA損傷応答に重要な役割を果たす。これまでの研究により、ATMの発現低下が、膵癌の悪性化,浸潤・転移能の獲得に関与すること、抗がん剤感受性が低下し、術後生存期間が短くなるとの知見が得られている。今後、放射線感受性、抗がん剤感受性における、ATMおよびRalの機能解析について、より詳細な検討を行うことで、Ral-RalGAPの臨床的意義を明らかにしていきたい。
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